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『幼いころから変わる事の無い』

 肩甲骨を包むように掌が動き、錦の唇が解ける。  淡く笑み頬を胸に擦りつけた。  海輝の指は、ただ優しい。  幼いころから変わる事の無い慰撫する手。  寂しくて悲しい時はいつも思い出した、さらさらとした掌。  壊れ物を扱うような手つきで肌を撫でる。  性の香りの無い愛撫からは、親愛の情が滲み出ている。  幸福感に胸がいっぱいになった。 「本当は水槽に入れるのはクラゲやタツノオトシゴが良かったんだけどね。クラゲは管理が難しいし、タツノオトシゴは混泳に向いていないし何より見栄えがいまいちって」   「業者からのレンタルなら、水槽管理位できそうだが。クラゲは見栄えのするデザインになると思う」 「定期メンテナンスいれるわけだし、僕も何とかならないかと思ったんだけどね。諸々のコスト面考えて魚の方が良いって話しで纏まちゃった。でもクラゲの水槽設置も捨てがたいと言う意見もあって、ラウンジバーで展示することになったんだ。本当は、君と泊まる部屋に置いて、いちゃつきながら水槽を楽しみたかったんだけど仕方がないね。クラゲやタツノオトシゴが良かったら、自分で飼いなさいと言う話だよね。うん! そうしたら、錦君が僕の部屋に来たときの楽しみも増えるな」

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