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『偶然だとも』

「色々私情が入ってないか」 「ヤダなぁ、偶然だとも。何か問題でも」  偶然という言葉を知ってるのかこの男。  顔を上げると不思議そうな目を向けられる。  何だか面倒なので、話しを水槽へと戻す。 「――あの水槽が不満なのか?」 「不満は無いけど、何というか王道過ぎて少し物足りないかな。でも気性が激しい個体が結構あるから、混泳させるなら種類は少し偏っちゃうし仕方ないか。スズメダイ入れたかったけど、喧嘩すると良くないから結局王道のデバスズメダイになっちゃったよ」 「一度に纏めて混泳させるわけじゃないだろ? 順番に入れて先に縄張りを確保させるんじゃないのか」 「そうだね。ただ、混泳は魚だけじゃないからさ。実は最初にレモンピールエンゼルを候補に入れたら、混泳と珊瑚諦めろと言われちゃった」 「アレは基本混泳には向いていないし食害の問題もある。単独飼育の方が良いだろう」 「磯巾着入れたいって言ったらクマノミ諦めろって言われちゃうし。クマノミか磯巾着かどちらか選べとか酷くない? カクレクマノミって比較的おとなしいのにね」

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