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『手を伸ばせば良い』
『海輝さんなら例え天の川が氾濫してもお前に会いに来るのでしょうね』
その通りだ。
彼は錦の為なら何でもする。
じゃぁ、自分は?
逆に、錦は同じ事が出来るだろうか。
足を踏み出す前に、あれやこれやと考え込んで結局は走り出す事が出来ない。
慎重と言えば聞こえは良いが、臆病と言われれば否定はできない。
会いに来たのも、迷うばかりの錦の手を取り引き寄せるのも海輝。
安心させるのも海輝。
決断は常に彼の方が早い。
恋愛に勝ち負け等無いと理解はしているが――受動的で与えられるがままに受け取るばかりの自分。
対等になるなら、何時までも待つばかりでは駄目だろう。
海輝の眠る顔を見てると、悩んでいるのがばかばかしくなる。
目の前に欲しい物はあるのだ。
手を伸ばせば良い。
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