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第10話 特別な日 ③

「あれ?山岸さん来られてるのに、なんだか浮かない顔してるね。何かあった?」 優しいクマのような体格の明久が直継の顔を見た。 「いえ…」 それだけ言うと直継は口籠った。 そんなの言えないよ。 忠直さんの腕が、俺から離れていったのが寂しかったなんて… 忠直さんへの気持ちは絶対に気づかれたらダメなんだ。 忠直さんにも、愛美さんにも、明久さんにも… そう思いながら、また店内に戻っていくと、大きなお腹を摩りながら、顔を歪める愛美の姿が目に飛び込んできた。 「愛美さん!大丈夫ですか?顔色悪いです!お腹、痛いですか?」 直継が急いで駆け寄ると、忠直がすぐに席を立ち愛美の側へ駆け寄り、慌てた昭久がキッチンから飛び出してきた。 「大丈夫か!?愛美!」 お腹を押さえた愛水に明久が肩を貸し、ゆっくりと椅子に座らせようとした時、 「あ!!」 愛美の動きが止まり、強ばった表情で明久を見上げた。

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