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第11話 緊急事態
「どうした愛美!!」
「破水…しちゃった……」
愛美の足元に小さな水溜りができている。
「破水!?」
一度に色々なことが起き、心配のあまり明久はパニックだ。
「愛美さん、とりあえず座りましょう。すぐに病院に行った方がいいですね。救急車呼びます」
忠直がゆっくり落ち着いた口調で話すと、真っ青な愛美がコクコクと頷く。
「お店の事は直継君に教えてもらって、俺が片付けておきます。だから安心しててくださいね。ところで愛美さん、今何週目ですか?」
「37週と…3日です」
お腹が痛みだしたのか、愛美が顔を歪めた。
忠直は頷くとすぐ救急に電話をし、状況を説明する。
「すぐに来てくれるそうです。明久さん、愛美さんのそばに…」
「ハ、ハイ!」
明久は忠直の言葉で冷静さを取り戻し、愛美の手を握る。
「愛美大丈夫だから、大丈夫…」
繰り返し繰り返し明久が愛美に言うと、愛美の表情が柔らかくなってきた。
「直継君。俺がドアに『close』の看板かけてくるから、その間に何枚かタオルと愛美さんと明久さんの荷物持ってきてくれる?」
「はい!」
忠直の的確な指示で、救急車が着くまでにみんな落ち着いていられた。
「あとのことは気にせず、お2人は愛美さんと赤ちゃんの事だけかんがえてくださいね」
「頑張って!愛美さん!」
救急車に乗り込んだ2人に忠直と直継が声をかけると愛美と明久2人同時に頷き、救急車のドアが閉められた。
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