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第12話 2人きり ①
「愛美さん、大丈夫でしょうか…。あとどれぐらい時間がかかるんでしょうか……」
「こればっかりは、どれぐらいかかるか分からないしな…。愛美さんと赤ちゃんの無事を願うしかできないね」
静まり返った店の中。
忠直と直継は2人椅子を並べ、隣同士に座っていた。
「コーヒー、冷めちゃいましたね。淹れ直してきます」
直継が立ち上がると、忠直が直継の手を握り、
「いいよ。さっき直継君に淹れてもらったから、今度は俺が淹れてくる」
忠直が2人分のティーカップをトレイに乗せ、コーヒーを淹れに行った。
忠直さんと2人きり。
愛美さんが大変な時にこんな事を思うなんてダメなんだと思う。
ダメだと思うけど…、忠直さんと初めて2人きりになれて、緊張で心臓がもたないよ…。
「熱いから気をつけてね」
直継の前に置かれたコーヒーからは淹れたてのいい香りと、白い湯気が立ち昇る。
2人きりなんて、もう二度とないかもしれない。
だから聞くなら今しかない!
ずっと気になっていた、聞きたかった事…
「あの…一つ聞いてもいいですか?」
直継は勇気を振り絞り、聞いてみることにした。
半年前、ここファミーユの前で忠直と再会した、それより前に出会っていた事を。
忠直が直継と会うのは2回目だという事を知っているか……
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