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第6話 ①

恋人が!できました!! なんて・・ こんなセリフを言える日がくるなんて自分でも全く思っていなかった。 生まれてもうすぐ十六年、誰かに告白された事などなかったし、誰かが自分を好きらしいなんて噂も聞いた事がない。 そういう話は、いつも隣にいる完路のためにあるものだと思っていた。 それが・・ 「え?恋人?」 完路が珍しく切長の瞳を大きくさせて聞いてきた。 普段ほとんど表情の崩れることのない完路だけど、そりゃぁ流石に驚くよなぁ・・と宝は思った。 揺れる車窓の風景がトンネルに入り真っ暗となる。 車内の人数は少なく、それぞれが転々と座っているので大きい声でなければ会話は他の人には聞こえないだろう。 「確認するけど・・誰と誰が恋人になったって?」 完路は少し怪訝そうな表情で聞いた。 「あの・・だから、俺と・・四賀」 宝は恥ずかしそうに視線を下に向けたまま答えた。 「・・なんで急にそうなったの?宝、四賀の事好きだったの?」 完路は射抜くような視線で宝を見つめる。 なんでそんなに睨んでくるのだろう・・? 宝は不安になり、その鋭い視線から逃れるように車内をフラフラと見回しながら話した。 「好きは、好きだよ。その、四賀といるの楽しいなって思うし」 「それは友達としての好きじゃなくて?恋人って何かわかってる?」 「そんなのわかってるよ!完ちゃん俺のことバカにしてるでしょ?!」 宝はついカッとなり、普段だったら完路には言わないような語尾の強い言葉で返してしまう。 「・・・」 「・・・」  少しの沈黙の後、電車がトンネルを抜け、真っ直ぐ続く日本海の水平線が目に飛び込んできた。 それと同時に完路がゆっくりと口を開く。 「ごめん・・別にバカにはしてないよ。ただ心配なだけ・・」 完路は自分の手元を見つめた。 その瞳がどこか寂しそうに見えて宝は慌てて答えた。 「あっ・・俺こそごめん完ちゃん!でも、別に心配するようなことないから!四賀と遊ぶ回数とかは増えると思うけど、完ちゃんとは今までと何も変わらないよ!!」 「・・・」 「ね?大丈夫だから・・その・・完ちゃんに・・おめでとうって言ってもらいたいんだ、おれ・・」 「・・宝・・」 完路は宝の方を向くと、少し間を置いてから言った。 「・・おめでとう」 そう言って完路は柔らかく微笑む。その様子に宝は安心してニコリと笑って答えた。 「・・うん、ありがとう!」 良かった・・ 俺はずっと、完ちゃんみたいな人間になりたいと思ってる。 完ちゃんは俺のなりたい存在そのものだ。 でもだから、その完ちゃんに自分の選択を否定されるのは辛い・・ 宝は先程の完路の表情を思い出した。 微笑んでおめでとうと言ってくれたけど、瞳はどこか寂しそうな気がした。

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