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第8話 ③

ーーー 「・・っう・・」 「宝、我慢しなくていいよ、今家誰もいないから」 「ぁっ・・でも」 「大丈夫だから・・」 「・・あっ・・ぅうん」 宝は堪えきれず、小さな喘ぎ声を漏らしながら完路の肩にしがみつく。 先走りで滑りの良くなっている宝のものを左手で扱きながら、完路は宝の首筋に唇を落とした。 「ひゃぁ!」 身体中が敏感になっているところに、さらに一番弱い部分に刺激を与えられ宝は思わず高い声を上げる。 「か、完ちゃん・・はぁ、俺・・もう」 「いいよ、宝。イって・・」 完路はそう言うと、先程よりも左手の速さを増していく。 「ぁっ・・あっ」 宝は完路の手に自身の精液を吐き出し、ぐったりとその肩にもたれかかった。 今日は試験勉強会の五日目だ。 『あの日』からニ日たった。 慣れるため。 そのために始めた完路との『特訓』は今日も勉強の合間に行われている。 都合の良い事に完路の母も祖母も夜まで帰宅しない。 昨日も勉強がひと段落ついた後、2人で触り合いっこをした。 最初こそ緊張してぎこちないが、完路が与えてくれる刺激に感化され宝も自然と手が動く。 それは今までに経験したことがない、頭も身体もフワフワと浮くような、自分が自分でないような不思議な感覚だった。 しかし・・ (完ちゃん、俺のためにこんなことに付き合ってくれて大丈夫なのかな・・) 完路から提案してくれたこととはいえ、少しずつ宝は気になり始めていた。 「あの・・完ちゃん」 宝はもたれていた完路の肩から顔を上げた。 「何?」 完路は先程手で受け止めた宝の精液をティッシュで拭き取りながら宝に目を向ける。 「・・・本当ごめんね、こんな事に付き合ってもらって」 「・・俺から言い出したことでしょ?」 「でも!それは俺のためじゃん。なのに完ちゃん巻き込んじゃって・・」 「・・・」 「あ、あのさ・・その、だいぶこういう事にも慣れてきたっていうか、なんとなくわかってきたから。こういうのは今日までで大丈夫だよ!」 「え・・・」 「色々ありがとう!完ちゃんには俺いっつも頼りっぱなしだよな」 宝はそう言ってニコリと笑ってみせた。これ以上完路に心配をかけないためだ。 「・・・」 「完ちゃん・・?」 完路は綺麗になった自身の手をジッと無言で見つめている。 それから何かを決意したかのように、グッとその手を握りしめて宝を見つめた。 「・・宝は・・わかってるの?」 「へ・・何が?」 「セックスってただお互いのもの触り合って終わりじゃないんだよ・・」 「え・・・」 「やっぱり、わかってない?」 完路は少しだけクスリと笑ってみせる。 「わっ、わかってるよ!!もっと、その・・色々やる、こと・・」 宝はカァっと顔を赤くして反論してみせようとしたが、『具体的』になにをどうするかうまく説明できずに口籠ってしまう。 その様子を見た完路は宝の腕を引っ張り自身の体に寄せると、そのまま床に倒れ込むように宝のうえに馬乗りになった。 「か、完ちゃん??」 「・・・」 宝は押し倒された状態でジッと完路を見上げる。 「宝、ちょっとジッとしていて・・」 「え?」 完路はそう言うと、宝の上からソッと降りて近くの机の引き出しに手を伸ばす。 どうしたのだろう・・宝がとりあえず寝転がったまま考えていると、何か冷たいものが下半身をゆっくり滑り落ちる感覚がした。 「ひぇ?!」 「ごめん、ビックリした?」 完路がそう言いながら再び宝の上に覆い被さる。 手には何かチューブのようなものを持っていた。 「えっ、何これ?」 「ローションだよ。こういうのがないと・・セックスする時辛いでしょ」 「ローション?」 一瞬何の事だがわからなかった宝は完路の手に握られたそれをジッと見つめて聞き返す。 それは宝には整髪剤か何かに見えた。 しかし完路は再びチューブから透明な液体のようなものを絞り出すと、手で温めるようにしながら宝の太腿あたりを濡らしていく。 「うわぁ!えっ!何!?」 ヌルヌルとした感触がこそばゆく感じ、宝は思わず太腿をキュッと閉めようとした。 しかしそれは完路の手によって制止させられてしまう。 完路は宝の足首を持ち上げると、太腿を抱えるように両脇で挟み込んだ。 「か!完ちゃん?!」 「大丈夫だから・・宝はこのまま動かないで・・」 完路はそう言うと先程のローションを多めに手に取り、ゆっくりと宝の後孔の周りに滑らしていく。 「えっ、ちょっ・・」 突然のことに宝は思わず目を見張った。 「な、何してんの・・」 「ここ、しっかり慣らさないと男同士はセックスできないんだよ」 「えっ・・」 「だから・・俺にまかせて」  完路がそう言った瞬間、まわりをぬるぬると滑らせていた指が一本宝の中に入る感触がした。 「あっ・・!」 宝はたまらず小さな声を上げる。 (な、なんだこれ!?) (な、なんで完ちゃんが俺のセックスの準備してくれてるの?!なんで?!) 「か、完ちゃん、やだよ!こんなことまでしなくていいよ!」 宝が腰を浮かせて起きあがろうとすると、完路はそれを押さえ込むように宝の上に覆い被さってきた。 「かっ・・うんっ・・」 宝はもう一度完路の名前を呼ぼうとしたが、それは口内へ侵入してきた完路の舌によって塞がれてしまう。 舌の動きとあわせるかのように、宝の中に入っている指が優しく周りをなめるように動き回る。 完路のキスによって呼吸するのも精一杯な宝はなんの抵抗も出来ず、最初こそ感じた違和感にも徐々に慣れていく。 (な、なにこれ・・なんか・・へん) 本来ならそんな場所ではないはずなのに・・少しずつそこが快感を拾っていくのを感じて宝は掌をギュッと握りしめた。 小さなリップ音と、宝と完路のシャツの擦れる音、それから初めて聞くような艶かしい濡れた音。 それが、小さい頃から遊びに来ていた完路の部屋に響いている。 今ここで起こっていることが日常なのか非日常なのか分からない。 ただ、先程から完路に与えらている快感によって宝の思考はふわふわと浮いているようだ。 なんでこんなことに?? そんな疑問を追求することよりも、初めて知る刺激に身を任せてしまいたい。 そんな気持ちに宝はなっていた。 気がつくと、完路の指は先ほどよりも2本多くなっている。一本ずつ様子を見て増やしていったみたいだが、すでに蕩けてしまっていた宝の頭ではそれに気づけなかった。 完路は自身の唇を宝の口から胸へと移動し、そこにも啄むようなキスを落とす。 「ふわぁ・・ぁっ」 宝はゾクゾクとうずくような快感に声を上げる。 中の指がコリコリと宝の気持ちの良いところを刺激し、宝の両足は完全に力が抜けきってしまった。 「・・宝」 完路は指を引き抜きくと、小さな声で宝の名前を呼んだ。 「へ・・」 宝はぼぅとする頭で力なく答える。  その瞬間、 完路は宝の両足を抱え大きく開かせると、自身を宝の中へ押し入れた。 「!!?」 宝はなにが起こっているのか分からず大きく目を見開いた。しかし下腹部に痛みを感じすぐに目をつぶって声を上げる。 「あっ!いた・・やだ!か、完ちゃ・・」   しかし完路は動きを止めることなく、宝の奥まで自身を埋め込んでいく。 「ぁっ・・」 完路の指によって慣らされたそこは、最初こそ痛みを感じたがすぐに馴染むかのようにそれを受けいれる。 「・・はぁ・・宝」 完路の熱い吐息が宝の耳にかかった。 「か、完ちゃん・・や、まって・・」 完路がこれからなにをするのか感じとった宝は、完路の動きを止めようと手を伸ばす。 しかし完路はその手を掴むと床に押し付け、ゆっくりと腰を動かし始めた。 「・・!あっ・・」 グチュグチュと先程完路によって塗られたローションが音を立てる。 その音は次第に完路のうちつける腰の音と重なっていった。 「やっ・・ぁっ、あぁ」 「・・っ・・うっ」 小さい頃から慣れ親しんだ完路の部屋に、あの頃には想像もつかないような淫らな音と二人の快感を拾う声が響く。 こんなに余裕のなさそうな完路を見るのは初めてだ。 宝は揺さぶられながら、熱を持った完路の綺麗な瞳を見つめて思った。 なんで? なんで俺達、こんなことしてるの? ねぇ、完ちゃん・・ 俺達、親友・・だよね? 今自分を抱いている人物は、強くて優しくてかっこいい、俺のよく知る完ちゃんなのだろうか? それとも俺は、もしかして・・今まで完ちゃんの何かを見落としてきたのか? わからないよ・・完ちゃん。 これが終わったら教えてくれる・・? 宝はそんなことを考えながら、ただ完路の熱をその身で受け止め続けた。

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