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【15】王都にいてスローライフはできないか、というか他にも考えることがあった再会。④
――パリンと、窓が割れたのはその時のことだった。
ん?
何事かと思った時、誰かが部屋に入ってきた。二人組で、覆面をしている。
――同時に部屋の扉も開いた。扉から入ってきたのはライネルとユーリスだった。
見れば時刻は8時だった。
「ラクラスの召喚魔法円の在り処をいえ!」
壊れた窓の前では、黒づくめの侵入者が俺に向かって剣を振る。
ライネルがそれを受け止めた。
「先にお逃げください」
ライネルがそう言った時には、強引に俺の手首を掴みユーリスが走り出していた。
足をもつれさせながらそれに従う。
すると今度は回廊の窓が突き破られて、新たな敵が現れた。
「お逃げください第二王子殿下。城へと侵入する実力。相手の力量は確かだ」
「え……?」
「時間稼ぎくらいは俺にもできます。あなたは将来この国を担うお方だ」
俺を抱きしめるようにしてユーリスがかばってくれた。彼の肩に長剣が突き刺さるのを見た。あっけにとられた俺は、気づけば無意識に魔術の呪文を唱えていた。
瞬間あたりに竜巻が生まれた。俺は魔術で侵入者を全て倒した。
それから膝をついて、血に濡れた肩に手を添えているユーリスの正面にかがんだ。確かに、そう確かに、今彼は俺をかばってくれた。その事実にどくんと鼓動が鳴いた。どうして、敵になるはずなのに……。そう考えたら無意識につぶやいていた。
「……もし俺を処刑するとしたら、どんな時だ?」
すると顔を上げたユーリスは、いっとき驚いたような顔をした後、満面の笑みを浮かべた。
「そんなことは決してさせない。もし殿下が投獄されるような窮地に立たされたならば、必ずおたすけいたします。それでも力が及ばなければ、俺もまたともに逝きましょう。たとえ行く先が地獄だとしても、誠心誠意を込めてお供いたします。たとえこの身を地獄の業火で焼かれようとも」
それは前世でも確かに聞いたことがあるセリフだったのだけれど。
俺には、ユーリスが嘘をついているようには思えなかった。
俺はこの言葉を信じていいのか?
まぁ感情的に無理だけどな!
ただ……ユーリスもこの国のことを思っているのだとは分かった気がした。
それからライネルが引き返してきて、他の近衛たちも集まり始めた。
そして俺は再決意をした。
俺は、絶対に幸せになってやる。
だけど。
それだけじゃなく、可能な限り大切なみんなの幸せも願おう!
そんな14歳の夜だった。
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