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「癒燐、癒燐っ…」 名前を呼ばれた青年は、思わず、顔が紅くなった。 「わっ、わわわ…。顔が近いです。夜兎伯父様!」 「いきなり、ぼーっとするから僕が驚いたよ。さぁ、三神帝に行こうか…」 「す、すみません」 どうしよう。 綺麗な顔が目の前にあったから、驚いた。 伯父の顔は改めて毒だと確信した彼は、三神帝の屋敷に向かう事にした。 夜兎伯父様の顔は、綺麗過ぎて苦手な部類だ。 だって、父上とは全然違う顔立ちだから…。 青年は父親と伯父の顔を比べてみたが、やはり、女顔だと思うのは伯父である。 幼い頃の父上は女顔だと聞かされていたけど、大人になるにつれ、顔が美形になっていったらしい。 何処で、変わったのかは解らないが、祖父の遺伝が隔世したのか。それとも、曾祖父の遺伝が、ばっちり隔世したのか。 当時は、相当、悩んだとか。 何せ、自覚症状アリの父上だ。 自分の性格を熟知している本人だからこそ、誰の遺伝を引き継いだのかを理解している。 呆れてしまったのは、僕じゃなく、一緒に話を聞いていた彼だ。 視線を男性に向ければ、嫌そうな表情をしている。 青年と一緒じゃなく『ソナタと一緒か』と、今にでも溜め息が溢れてきそうな雰囲気が漂う。 それを楽しむかの如く、小さな声音で『残念』と呟く彼は、にっこり微笑んだ。この微笑みが表す意味を知っている男性は苦笑い。 うわぁ、顔が引きつっているよ。 あれは…。 相当、嫌という意味が含まれている。 彼の表情を読み取った青年は、一驚するのも良いが、次の科白は大抵、決まっているのを知っていた。 相手に打撃を与えるのが得意な父親に対して、男性は『相変わらず良い性格している』と言いたいのだろう。 だとすれば、勿論、彼も父親に嫌な思いをさせるのが得意なのだろうと推測した。

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