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春の矛先に魅せる華美なる華
ー十年前
色とりどりの花が咲き乱れる季節に、一人の天使とも言える男の子が、誕生した。
それが、僕の弟。
『水鬼帝 癒燐』である。
「はぁい、僕の可愛い御子」
顔に似合わず、やんわりと、微笑む父親。
容姿端麗、頭脳明晰、性格的に、やや問題アリの『緋神帝 械』。
それが、僕の父親だ…。
本当、顔に似合わず、癒燐を、愛でるあたりが、悪夢と、化している。
「ほら、君も、抱いてみて」
「あ、はい…」
ー…そう、言われて。
思わず、僕は、弟を、抱いた。
柔らかく、ふんわりとした感触が、忘れられない。
「君は、母君に似てしまったのか…。それとも、隔世遺伝?僕は、夜神帝の者の事は、母様からしか習ってないから、あまり詳しくないけど。少なからず、水鬼帝の血筋だと…祖父様ぐらいだろうか」
『こんな硬い人間』と、小さく呟いた。
彼は、父親の言葉に、疑問を覚えた。
何故なら、母親は、どう見ても、子犬系な感じの可愛らしい男性。
故に、父親の心を擽る性格をしていて、例えるなら、瞳が。
くりっとした、チワワみたいな小型で…。
まるで、戯れてきたら。
つい、構いたくなる感じだ。
あれでも、若い頃は、目の前に居る父親を、嫉妬させたくらいの大物。
『械は、本妻である“千耶”様とは、御子を…作らない掟をして、契りを交わしているからアレだけど。今でも、千耶様を…愛している事には、変わらないと思うよ。それに…彼の事を、一番、理解しているんじゃないかな』
事実、母は、千耶様に、逢った事があるらしい。
『良妻賢母』。
そいゆう雰囲気を、纏わせつつ、上品さが、溢れる方だったらしい。
夫婦生活長いと、色々、見えてくるらしいが。
この、父親を、見ていたら、そいゆうのは、無縁に、思えてきた男性。
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