14 / 17

#14 捕食される蝶 *

「ユッキーの口は、こっちね」  背後にいた少年が柚弥の顎を掴み、自分の方 へ向けて無遠慮に口付けた。 「んっ、ん……っ」  思うまま唇を喰み、口内を掬い上げられ、柚哉の鼻から苦しげな吐息がくぐもって聞こえる。  シャツを裂いた少年は露わになった柚弥の肌に息を呑み、を目に見つけた瞬間、釘付けになった。 「そうだ先輩に聞いた、ユッキーのあれ、上も下もめちゃめちゃピンクだって」  唇を味わっていた少年も、子供の好奇心の上に淫猥な性への貪欲を被せ、目を輝かせて覗き込んだ。 「……てかユッキー、やばいって! どこにピアス着けてんだよ! うわあ、やばいなこれ、初めて見た。……ねえ、弄っていい?」 「んん、あ……、いや……」 「痛い? ……嫌じゃなさそうだよ。うわあ、いやらしいなあ。こんな赤ちゃんみたいな(うぶ)な色してんのに、こんないやらしいの着けてさ」 「……やあだ……っ、ねえ、引っ張らないで……っ」 「嘘だ。苛めて欲しいって言ってる。もう片方の、触ってもないのにぷくぷく膨れてるよ。可愛いなあ。こっちの何もない可愛い方も、弄ってあげるね」 「んう……っ、やだあ……! ……苛めて、苛めて欲しいけど……、取って欲しい……。…………ねえ、リョウ君、取って……」 「え……っ」 「むずむずする……、むずむずして切ないから、取って……」 「で、出来ないよ……っ」 「……口で、取って……。それごと口の中でめちゃめちゃに噛まれるのもいいけど、 取って、とろとろに舌で(とろ)けさせられるの、凄い気持ち良いの…………、」  そしたら俺、そこだけで()っちゃう。  柚弥は殆ど背を向けていて、彼等に覆い被さられているから、こちらからは彼等の発する言葉しか、彼等の目に映るものは何一つ受け取ることも出来ない。  それでも、気が遠くなりそうだった。  上半身への愛撫はやがて柚弥のベルトにも手を掛け、慌ただしく下の衣服も取り剥がされていく。 「えっ……!? ユッキー、ちょっとピンク過ぎる……っ、てかこれ剃ってんの? めっちゃ(うっす)いじゃん! 何だこれ、もう産毛だよ、殆ど透けてんじゃんいやらし過ぎる、もう俺、何相手にしてるのか、訳わかんなくってきた……っ」  少年達が息を呑み、何故引き摺り込まれるように惑乱していくのか、解った。  遠目で見ても、柚弥の肌は青みがかるように全身白く、肢体は華奢で、たとえその中心を目に映すことが出来ない、言葉のみに依るものだとしても、 その先はどうなっているのか、どんな色でどんなかたちをしているのか、その欲で人のこころを掻き立てた。  (かお)が小さいのは知っていた。だが、その下の頸も長く端然なのだと。滑らかで白い。口づけたくなる衝動も解る。むき出しの肩の(ライン)も強く指を埋め込みたくなるように儚げだ。  彫ったように浮き出た鎖骨が淫らな陰影で醸し出される。獰猛な獣がそれにむしゃぶりつく姿を覚えず彷彿とさせた。  脚が、細くて長い。どちらかといえば小柄だ。だが、手脚が長いのだと。  控えめなふくらはぎから伸びた膝から下が流れるようで、行き止まりの脚首は強く握りたくなるほどにきゅうと締まり、きっと、片方の()のなかに難なくおさまる。  まるで、白い蝶が羽をむしり取られていくようだった。  むしり取られて何も纏うものがなくなった蝶は、二人がかりで全身を(まさぐ)られ、その身の蜜を味わうように捕食されていった。 「…………ねえ、もういいよ、やだやだ擦らないで、出ちゃう…………っ。 あああ……、そこも、弄っちゃ、駄目……。ふにふにするの、駄目……っ。あああ、塗りつけないで、やだあ、どうしてばらばらに弄るの……! やだよお、我慢できないよお…………っ」

ともだちにシェアしよう!