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#14 捕食される蝶 *
「ユッキーの口は、こっちね」
背後にいた少年が柚弥の顎を掴み、自分の方 へ向けて無遠慮に口付けた。
「んっ、ん……っ」
思うまま唇を喰み、口内を掬い上げられ、柚哉の鼻から苦しげな吐息がくぐもって聞こえる。
シャツを裂いた少年は露わになった柚弥の肌に息を呑み、そこを目に見つけた瞬間、釘付けになった。
「そうだ先輩に聞いた、ユッキーのあれ、上も下もめちゃめちゃピンクだって」
唇を味わっていた少年も、子供の好奇心の上に淫猥な性への貪欲を被せ、目を輝かせて覗き込んだ。
「……てかユッキー、やばいって! どこにピアス着けてんだよ! うわあ、やばいなこれ、初めて見た。……ねえ、弄っていい?」
「んん、あ……、いや……」
「痛い? ……嫌じゃなさそうだよ。うわあ、いやらしいなあ。こんな赤ちゃんみたいな初 な色してんのに、こんないやらしいの着けてさ」
「……やあだ……っ、ねえ、引っ張らないで……っ」
「嘘だ。苛めて欲しいって言ってる。もう片方の、触ってもないのにぷくぷく膨れてるよ。可愛いなあ。こっちの何もない可愛い方も、弄ってあげるね」
「んう……っ、やだあ……! ……苛めて、苛めて欲しいけど……、取って欲しい……。…………ねえ、リョウ君、取って……」
「え……っ」
「むずむずする……、むずむずして切ないから、取って……」
「で、出来ないよ……っ」
「……口で、取って……。それごと口の中でめちゃめちゃに噛まれるのもいいけど、
取って、とろとろに舌で蕩 けさせられるの、凄い気持ち良いの…………、」
そしたら俺、そこだけで達 っちゃう。
柚弥は殆ど背を向けていて、彼等に覆い被さられているから、こちらからは彼等の発する言葉しか、彼等の目に映るものは何一つ受け取ることも出来ない。
それでも、気が遠くなりそうだった。
上半身への愛撫はやがて柚弥のベルトにも手を掛け、慌ただしく下の衣服も取り剥がされていく。
「えっ……!? ユッキー、ちょっとピンク過ぎる……っ、てかこれ剃ってんの? めっちゃ薄 いじゃん!
何だこれ、もう産毛だよ、殆ど透けてんじゃんいやらし過ぎる、もう俺、何相手にしてるのか、訳わかんなくってきた……っ」
少年達が息を呑み、何故引き摺り込まれるように惑乱していくのか、解った。
遠目で見ても、柚弥の肌は青みがかるように全身白く、肢体は華奢で、たとえその中心を目に映すことが出来ない、言葉のみに依るものだとしても、
その先はどうなっているのか、どんな色でどんなかたちをしているのか、その欲で人のこころを掻き立てた。
貌 が小さいのは知っていた。だが、その下の頸も長く端然なのだと。滑らかで白い。口づけたくなる衝動も解る。むき出しの肩の線 も強く指を埋め込みたくなるように儚げだ。
彫ったように浮き出た鎖骨が淫らな陰影で醸し出される。獰猛な獣がそれにむしゃぶりつく姿を覚えず彷彿とさせた。
脚が、細くて長い。どちらかといえば小柄だ。だが、手脚が長いのだと。
控えめなふくらはぎから伸びた膝から下が流れるようで、行き止まりの脚首は強く握りたくなるほどにきゅうと締まり、きっと、片方の掌 のなかに難なくおさまる。
まるで、白い蝶が羽をむしり取られていくようだった。
むしり取られて何も纏うものがなくなった蝶は、二人がかりで全身を弄 られ、その身の蜜を味わうように捕食されていった。
「…………ねえ、もういいよ、やだやだ擦らないで、出ちゃう…………っ。
あああ……、そこも、弄っちゃ、駄目……。ふにふにするの、駄目……っ。あああ、塗りつけないで、やだあ、どうしてばらばらに弄るの……! やだよお、我慢できないよお…………っ」
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