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「兄上とは、何度会った」

「おまえが新しく召された家族の一人か」 無遠慮に上から下まで見られても不快さを感じさせない領主は、ねっとりとした視線を春吉に向けてくる従者に、そこで待っていろと伝えて履物を脱いだ。 「ここに来て、どれほどになる」 「一月ほどです」 「兄上とは、何度会った」 「見分にいらした日に、お会いした限りです」 「姉は、側室棟か」 屋敷は、表棟といわれる従者が過ごし来客を迎える部分があり、そこから渡り廊下を経て側室が住まう棟、宗明が住まう棟、その間に一つ空棟があり、庭園を囲んでいるような形をしていた。 「いえ。来客用の部屋をいただき、そこにいます」 そこで成明が、おやと眉を動かす。それに対する発言はなく、宗明の居住棟へ到着した。それではと頭を下げる春吉に、身に気をつけろよと悪戯っぽく笑った成明の言葉の意味が解らないまま礼を述べ、自室として与えられた部屋へ戻る。 「初めての案内は、どうだった」 戻る途中、声をかけられた。 「いきなり領主様の案内だったもので、緊張しただろう」 手を伸ばしてきた屋敷の者が肩を揉んできた。年が近い所為か、彼はよく春吉に声をかけてくる。 「どうだ。成明様がお帰りになられるまで暇だろう。俺の部屋で、茶でもして待たないか」 肩を組まれ、顔を覗きこまれる。息がかかるほどの至近距離にある顔が、何時もと少し違っている気がしながら頷こうとすると、背後から声がかかった。

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