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触れて、欲しかったんだ。
触れられた唇の奥で、春吉は宗明の名を呟いた。寝所に入った瞬間、体の奥から震えが走った。触れられて、それが目から溢れ出ていた。
――触れて、欲しかったんだ。
唐突に、唇を重ねられながら理解する。今からこの人の物になるのだと、今からこの人が自分に溺れるのだと思うと、甘い喜びが胸を締め付けてくる。
「拒むことは、赦さぬ。姉の処遇も父の処遇も、春――おまえの心がけ次第と思え」
「――は、い」
返事が、かすれてしまう。それをどう受け止めたのか、宗明が耳元で囁く。
「身を委ねておれば良い――全て、私にまかせよ」
手を伸ばして宗明に触れたい衝動を、春吉は着物を握り締めることで堪える。宗明の唇が顔中に降り注ぐのを受け止めながら、肌から着物が滑り落ちるのを、目を伏せて感じた。
「春」
名を呼ばれ、唇をきつく結ぶ。油断をすれば自ら求めてしまいそうになる自分を、春吉は自覚していた。
「愛らしいな」
宗明は掌を春吉の肩から胸へと滑らせ、その下の布も全て奪い去った。すでに立ち上がっていた春吉の中心に掌を添え、壊れ物のように扱う。
「は、ぁ」
硬く身を強張らせ、震える体を抱き寄せる。掌で捏ねていると、ぷくりと蜜を浮かばせ、自らを濡らし始めたそれに目を細めた。
「気持ちよいか」
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