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下世話な顔が間近にあった。

――もう、呼んではくださらないのだろうか。 胸が、締め付けられる。あの指で、声で、瞳で、渡り廊下を進んだ美しい女達を愛しているのだ。 「どうした、春吉」 思わず胸元を掴み、立ち止まると声をかけられた。 「ああ、光正様」 「訪れるものもないからな、仕事がなくて暇をもてあましているんだろう。俺も、この屋敷にいると平和でなぁ。することもない。見目麗しい女も、見続けていると飽きてくる」 軽く肩をすくめられ、同意とも否定ともつかない顔をしてみせる。 「何かあった時の護衛と言っても、何もない。ぴりぴりしているのは、隆敏様くらいだよ」 そっと、目だけで周囲を見回し、光正が顔を近づけ声を潜めた。 「宗明様が、今まで以上に側室をお呼びになられているからな」 瞬きをして凝視すると、下世話な顔が間近にあった。 「領主であらせられた頃は、側室は形だけ。北の方の佳枝様だけを愛でられていらっしゃったのが、あらぬ疑いをかけられて隠居されることになったってことは、知っていたか」 首を振る。そのような話を、誰かとしたことはなかった。 「隠居をなされることになった理由くらいは、知っているだろう。あれは、完全なでっち上げで、国主の愛娘であらせられる佳枝様が仕組んだことって噂だ」 意味が、よく判らない。何故そのようなことをする必要があったのか。それが顔に出ていたらしい。 「部屋に来いよ。詳しく話、してやるからさ」

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