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ならば、そのためだけに、行動をすればいい。

「どこへなりと、行くがいい」 宗明は、徒歩で屋敷までの道をたどり始める。 ――佳枝。そこまでして、成明が欲しいか。 一晩考えて至った結論に、哀切を浮かべる。そういう方法でしか求めることの出来ない佳枝を哀しく、望むままに動けることを羨ましく思った。 ――ならば、私は。 違う方法で求めてみようと、土を踏みしめて進んでいく。馬の足で庵についた時間を考えれば、徒歩でも昼ごろにはたどり着けるだろう。 ――佳枝は、私を罪人としたのだろうな。 そう、予測した。それ以外に、成明が自分をあわてて庵に逃がした理由が思い浮かばなかった。自分の想像が、そう遠く離れていないだろうと確信のようなものを抱え、宗明は屋敷へ向かう。胸にあるのは、春吉のことだった。屋敷に帰り着いたとしても、見つかれば自分は捕らえられるだろう。成明が何か働きかけをし、屋敷にいる者たちが離散をすることで済めば、春吉らは出自のこともあり村に返される可能性が高い。 地位も金もない、追われている身である宗明が行って求めたとても、春吉には応じる理由が何一つない。けれど、今一度会いたいと、それだけが一晩自問した末に残った結論だった。 ならば、そのためだけに、行動をすればいい。 *** 隆敏は光正と共に屋敷を探ってみたが、彼が抜け出した場所にも人がおり、屋敷内に入ることは適わなかった。けれど、宗明が罪人とされたこと。その身柄を拘束するためにやってきた者たちは国主の――言い換えれば佳枝の手の者であるということがわかった。 罪状は、謀反。 返り咲くために虎視眈々と成明を狙っている、という話が作られていた。成程、有り得ない話ではない。あくまでも、外側からみればということではあるが。

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