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「無事だったかぁ」
「お二人を存じているならば、そのようなことを信じるはずがない」
けれど、目の前にあるのは紛れもない現実。おそらくは佳枝の妄言を信じきった国主の兵士たちだろう。
「光正」
「はいっ」
すっかりくたびれた様子の光正が、気力を振り絞って背筋を伸ばす。
「おまえは、屋敷に戻れ」
「ええっ」
「安心しろ。相手の狙いは宗明様だ。内側から、春吉を連れ出してこい」
耳を貸せと隆敏に戻る算段を言われ、光正は泣き出しそうな不安顔を隠そうともせずに屋敷に戻った。それを見送った隆敏は、ふと背後を――宗明が隠れている庵の方角を見つめて拳を握った。
***
部屋にいると、足音が近づいてきた。春吉は顔を上げ、眠っている姉と父を見た。しばらくの後に襖が開き、現れたのはずいぶんと薄汚れた姿の光正であった。光正を連れてきた男は、値踏みをするように春吉を眺め、光正の背中を押して部屋に押し込むとすぐに襖を閉めた。ばたりと倒れた光正が四つんばいで春吉の側に寄り、縋りつく。
「無事だったかぁ」
「光正様、そのお姿は……」
「屋敷が囲まれる前に、外に出ていたんだが」
耳元に、光正が顔を寄せて春吉は思わず身を引いた。
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