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光正の言葉に、春吉は記憶を探る。

胸を張った光正が、まかせておけと応じて、そういうことになった。そういうことになったが、まずこの部屋からどう出て行くのかという疑問に、光正は何の問題もないと大声で襖の向うに声をかけた。迷惑そうな顔をした兵士が、すぐに襖を開ける。 「春吉を、成明様のもとに連れて行く」 目を丸くした春吉を引っ立てるように乱暴に立ち上がらせ、兵士の前に立つ。 「おまえは、見張るように言われているんだろう。逃げ出して罪人に肩入れするようなバカはしないから、安心しろよ」 皮肉っぽく片頬を持ち上げた光正に、芥を見るような顔をした兵士が顎で行けと指示する。乱暴に春吉を連れて廊下を行き、兵士の姿が見えなくなってから渡り廊下を慌てて降りて身を隠した。 「入ってから見てきたが、手勢はそんなに多くなかった。見張りは、各棟の出入り口と屋敷の入り口くらいで、人は一箇所に集められて見張られている。屋敷をしょっちゅう歩き回っていたから、人目につかないように出られそうな場所、わかるだろう。陰になるような場所とか」 光正の言葉に、春吉は記憶を探る。誰にも見つからず、抜け出せそうな場所――。 「こっちへ」 ひらめいた場所へ、すぐに足を向けた。慎重に進んでいきながらも迷いのない春吉のあとを、きょろきょろしながら光正がついていく。 「あそこ。あの池の向うの垣根から、出られます」 小さな池が作られた奥には、腰の高さほどの低木が植えられており、その先の塀は土ではなく、垣根になっていた。その奥に、裏の林が見える。 「あの垣根を登れば、抜け出せます」 「あれを、登るのか」

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