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それが十一月十日の午前の出来事。

それが十一月十日の午前の出来事。 忘年会の出欠確認の返信期間最終日だった。 死ねば良いのにと言う言葉は、どんな感情に繋がっていたのか。 日程調整などする気も無いくせに。 年末に向けて一番忙しい時期なのに。 大事な人と過ごしたいのに。 ――そういうことだろう。 死ねば良いのにと殺意を込めて呟いた同僚の左薬指に煌めく指輪。 彼は二年同棲していた恋人と今年の五月に入籍した。 所謂授かり婚というやつだ。 死ねば良い。 そうか。それは海輝も同感だ。 結婚もしていないし当然子供もいない。 指輪も無い。 それでも海輝も気分は新婚なのだ。

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