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本人を蚊帳の外に置き言いたい放題である。

面白半分又は好奇心、憧憬が妄想を生んで。 噂は尾鰭を付けさらに加速し広まる。 経理課で人事課で総務課で法務課で開発課で情報システム課でカスタマーサポート課で、半ば芸能スキャンダルの様にプライベートな話題は朝比奈 海輝一色だった。 朝比奈 海輝が失恋をしてクリスマスに予定が無いので忘年会に出席すると言った具合だ。 「忘年会出席って聞いた?」「聞いた~友達が話してた」 もはや誰の話か口にしなくても通じる話題だ。 「彼女と別れたからクリスマスデート無し。忘年会でれるらしいよ」 「チャンスじゃん」 「付き合うとか、スペック高すぎて無理」 「アンタ彼氏いるじゃん」 「私も無理。朝比奈さんって、顔綺麗すぎて逆に無理。それなら、開発部の木下君の方が良いな」 「え? 木下君とかってちょいブサじゃん」 「アタシさ、顔の良すぎる男って逆に駄目なんだよね」 「あ~でも分かるかも、観賞用だよね」 本人を蚊帳の外に置き言いたい放題である。 男にも選ぶ権利はあるのだが、その場の女子社員は誰一人としてその真理に気付くことは無い。 そして、噂を喜ぶ女子社員の一部は別の狙いを定める。 つまり、失恋してクリスマスの予定が無いと言う事は――彼は完全フリーの可能性が高い。ならば何らかのきっかけがあれば、自分が彼女候補になれるのではないか、お近づきになれるかもしれない。それは、まさに忘年会の席を利用すれば容易いのではないか。 単純だが、現実的な下心だ。 秘書課の給湯室で、石川はポットの湯が沸くまでチョコレート菓子を頬張る。そして、同僚の草野に本題を切り出す。 「朝比奈さんと同じ部署に友達いたよね?」 「いるよ」 「じゃぁ、忘年会後にさ。飲み直そうって誘えない?」 誘い出した店で、落ち合おうと言う狙いだ。 「え? それ引かれないかな」 「じゃぁ、連絡先交換して皆でランチとか」 友人もいるんだ一緒に良いよねーとか言い、ランチタイムを共にしてその時に連絡先を手に入れるのだ。 女達はもはや肉食動物の様だった。

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