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僕の好きな子を勝手に失恋させるな。

「僕は失恋してないからね!」 「あの、そこなんですか」 錦とは、二人で一つと言えるくらいに愛し合ってるのだ。 海輝が磁石のエス極なら、錦はエヌ極。 惹かれあう運命なのだ。 それを、海輝にとってはどうでも良い人生のモブ共の安っぽい好奇心に晒されるとは。何だか気分が悪い。 隠し持っていた自分の大事な宝物を勝手に覗かれて、価値の分からない馬鹿どもに低俗な批評をされた気分だ。 許せない。 許せないよね錦君。 僕が失恋すると言う事は、錦君も失恋すると言う事になる。 僕の好きな子を勝手に失恋させるな。 錦君、全員締め上げても良いかな? 良いよね。 錦君、僕がんばる。 海輝は此処にはいない恋人に語り掛ける。 記憶の中の錦は、三百六十度どの角度から見ても美しい。 錦君っ、大好き。 少しだけ心が穏やかになる。 錦マジックと命名した。 すると記憶の中の錦が「心底どうでも良い。別に誰に何を言われようと、興味ない。お前が俺をどう思うかが一番重要な事だ。俺以外見るな。下らない」と一刀両断する。 格好良い! 錦君! 御免ね、僕よそ見しないよ。 そうだ、海輝。 僕も君以外にどう思われようとどうでも良いんだ。 外野の声など気にするな。 彼らに錦の素晴らしさを教えてやる必要はない。 錦は大事な宝石なのだ。モブ共に価値を教える必要も無いし。 見せびらかせるほど安くはない。

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