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僕の靴が舐めたくなったら何時でもどうぞ
「あっれぇ、これはこれはどうもぉ。忘年会大好き幹事の山田さんではありませんかぁ」
上体だけを後ろにそらす様なふざけた格好で、山田を見て微笑む。
わざとらしく強弱をつけた口調で挨拶をすると、山田が酷く嫌そうな顔をした。
「今日も機嫌取りお疲れ様です。機嫌を取るのがお好きなら相手を選んだ方が賢明ですよ。僕の靴が舐めたくなったら何時でもどうぞ。あぁ、そうそう僕の欠席を取り消した張本人と川野君から教えて貰いましたけど。いやぁ、忘年会強制って恰好悪ぅー。これハラスメントですよね。訴えちゃおうかなぁー」
ハラスメントの被害者とは思えないふざけた態度だ。
舐め切った態度だが、目つきが殺し屋のそれだった。
ひぃいなどと、情けない声を最後に口を閉ざした山田に今田が咳払いをする。
「それでまた欠席?」
話しを戻してきやがった。
何とも面倒だ。
「またとは? このチームメンバーとの仕事は今年の夏からです。つまり、半年の付き合いですから『また』ではないですよ? プライオリティって御存じですか?」
「本当に反抗的だな君は。去年も君は欠席だと前任者から聞いてるよ。一度くらいは出なさいよ」
「前任者ですか」
今年の春に停職処分後に自主退職したアイツの事か。
お前が居るから業績悪いんだよと言う事で、プレゼン資料をセクハラ動画と入れ替えてみた。プロジェクターに映し出された自らの問題行動に、面白いほどに狼狽えて暴れ警備員に取り押さえられ、会議室を引きずり出されたアイツか。
余計な事を言ってくれたな。
「はて、記憶にございませんねぇ。しかし、停職処分となったあの人と親交があったんですか? おやぁそれはそれはそれはぁ、宜しくありませんねぇ」
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