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錦君と僕の邪魔をする奴は万死に値する。

可愛い。 錦君可愛い。 大好き。 脳内で――ぎゅっと抱きしめて、髪の毛に鼻先を埋めると仄かに良い香りがする。 ミルクかビスケットか。 儚く消える甘さ。 ベビーパウダーを思わせる無垢な香り。 清らかさの中に匂い立つ艶は、海輝に性の快楽を教えられたからだ。 堪らない。錦君。離れたくないずっと抱っこしていたい。 しかし、海輝は社会人だ。 午後には仕事が待っている。 休憩時間終了の十分前に「また夜にね」と錦とお別れの挨拶をして、眼を開く。 そして、携帯待ち受け画面にキスをしようとしたら、件の今田に邪魔をされたのだ。 発狂しかけた。 ディスプレイに映し出された麗しの我が義弟は、口付をまだかと待っていると言うのに。 小さな桜色の唇が寂し気に此方を向いている。 錦君! ごめんね。 糞野郎に邪魔をされた。 許せない。 錦君と僕の邪魔をする奴は万死に値する。

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