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恨むなら、順風満帆な僕を嫉妬する神を恨んでくれ
十二月二十四日。
クリスマスイブだ。
兎に角早く帰らねばならない。
海輝は昨日「叔父がどうも倒れて入院した」事を理由に取引先から他部署、個人的に誘われた忘年会飲み会食事会全てをキャンセルする。止むに止まれぬ事情なら、ドタキャンの方が自然だろう。
「実は叔父の体調が芳しくなく緊急搬送された」「昨日理由を話す前から頭ごなしに欠席を拒否された」「人命より飲み会優先だなんて信じられない。パワハラだ」
――等と涙ながらに訴えて上司と山田に対しても非難の眼差しを向ける。
祝賀会や重要な会議や打ち合わ兼会食は全て出席するので、問題ない。
そして、本日は十九時に会社を出たいので「入院した叔父が危篤状態のようだ」と説明し帰る事にした。
表向きは白々しいほどに悲壮な表情を浮かべる者も居るが中には、明らかに盛り下がる女子社員も数多くいる。海輝の知ったことでは無い。
さて、仕上げといこう。
上司のデスクまで進み腹に力を入れる。さぁ、聞け僕の美声を。
涙をハンカチで拭い震える声で
「貧乏学生だった僕を支援してくださった叔父の命の灯が消えようとしてるんです!!! 僕が高校卒業できたのも叔父さんの存在が有った! 大学へ行かず就職しようとした僕を進学させてくれたのも叔父さんのお陰なんです! そんな叔父さんが倒れてしまった! 僕の道標となった叔父さんがっ危篤状態なんです!!! 何て事だ。この世には神も仏も居ないのか! 皆さん申し訳ない。恨むなら、順風満帆な僕を嫉妬する神を恨んでくれ」
「分かった分かったから落ち着きなさい」
「僕は常に冷静です」
「キメ顔で言われるのがまたムカつくなオイ」
開きっぱなしの硝子製の扉の向こう側から、同じプロジェクトチームメンバーから非難の眼差しが飛んでくる。
投げキスをしたら、先輩コンサルタントの伊藤が笑顔で親指を下に向けて来た。
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