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宇宙を背負ったまま思考が一瞬止まる

錦の背後からクリスマスソングが聞こえる。 ベストクリスマスソングに選ばれる有名な洋曲だ。 静かな曲を好む錦にしては賑やか過ぎる陽気なメロディ。 お開きになったクリスマスパーティーの名残のようだ。 錦が楽しめたのなら何より。 彼の弟や保護者が騒いでいるのが少し気になったが、今時携帯電話も持たない錦だ。固定電話を使用しているのだから、仕方がない。 クリスマスのメッセージだの、プレゼントのお礼だの、恋人らしく互いの近況を教え合いそして、次に会えるのは来年かな。早く会いたいなと甘えた声を出せば、錦が「お前、俺に会いたいのか」と聞いてくる。 「何言ってるんだ。当り前じゃないか」 即答した。 え? 今更何だ。 当り前じゃないか。 『お前の気持ちは良く分かった』 「うぅん。来年なんだけど、錦君の予定に合わせて休み取ろうかな」 海輝は自分が合いに行くこと前提で話しを進めていたが……。 『そうか。では会いに行く』 海輝は同僚がスペースキャットになる姿を幾度か見たことがあるが、自分が成るとは思わなかった。 まさに、宇宙を背負ったまま思考が一瞬止まる。 今、何て?

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