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恨まれても仕方がないだろう。

「グループ企業内だから「社内コンサルト」の枠に無理矢理収めた感じだけど、何か違うよね。部署に関係ない仕事を「掛け持ち」してるよね。おまけに、コンサルトとか言うけど、内容みれば僕パートナーに近い事やらされてるよね。僕、搾取されてるよね。訴えたら勝てると思うんだ」 「海輝様の腕の見せ所ですね!」 「君、投げやりになってるぞ。僕の扱い滅茶苦茶じゃない? ねぇねぇ」 アホなのか金のかかった嫌がらせか過剰に海輝の腕を買ってるか、純粋に海輝の能力を信頼してるからか、上司心で鍛えたいからか。 取り敢えずは、全てだろう。 企業の利益になるなら、利用するのは理解できる。 しかし、嫌がらせについては。 心当りがあり過ぎた。 海輝は当時調子に乗って、ジャルダン・デザンジュ完成後に保有権を盾に上司何人かの首を切り、さらには大幅な人事異動を提言したからだ。 恨まれても仕方がないだろう。 既に海輝の手から離れた事案とは言え、美味しい所だけ上手く持っいてかれた感が強い。 幹部候補の推薦を受けた後、そのライン越えの為の試練とも言えた。 学生時代の「アルバイト」とは違い、「デビュー戦」同様の始めての仕事だったから思い入れは有る。 ――仕事が山ほどある。次にやらねばならない事もある。 地盤作りを目的に達成した成果だ。 だから、もう手放しても惜しくないとも思うのだが、苦労をせず高みの見物をしていた連中にとられるのは若干面白くない。 ――今は未だ、高みの見物をされる立場なのだ。 「あのホテル、適当な時期に業績悪化させてみようか」 「あの、何を」 そうしたら、上司の慌てふためく姿が見えるかもしれない。 等と物騒な事を考える。 いけないいけない。 そんな事したら、錦とのお泊りデートが出来なくなってしまう。 七夕デートで錦を弄繰り回したシャワールームに鏡を付けるとあの時彼の泣き顔を見て誓ったのだ。

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