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そんなに困らないでくれ

「条件は問題ないね。これで良い」 「有難う御座います」 仕事は殆ど片付いたが、一時間前にお使いを頼んだもう一人の部下が戻らない。綺麗にベッドメイキングされたままのベッドにダイブしたい衝動に駆られるが、如月の手前止めておく。 「アジア統合部門の仕事が始まれば、さらに忙しくなりますね。海輝様が交渉人をされるのでしょう?」 契約書の内容を確認し「中華圏ツアーだね。お土産はお茶で良いかい?」と返す。 「え? お土産ですか?」 眼の下に隈を張り付けても爽やかな笑顔を見せる如月が、書類から顔を上げる。 そんなに困らないでくれ。 「君は僕のお守を良くしてくれてるからね」 恐縮しながらも嬉しそうな顔をするので、朝比奈で働く人間にしては珍しく良い奴だなと感心する。 来年如月は日本で留守番なのだが、それまでは扱使われるのだから土産位はサービスしたいのだ。 「ご同行なさるのは二階堂様の部下ですか?」 「うん。先に現地入りしてるからあっちで落ち合う予定。日本からは二階堂さんと僕。あと蓮城君を連れていく」 「蓮城も同行するんですね」 「あれが居ないと色々不便だからね」 「二階堂様とのお仕事も久しぶりなのでは?」 「久々だね。楽しみだ」

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