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錦君の存在がもうお花でしょ? 花の存在意義は何なのかな

「海輝様はお部屋に観葉植物とか置いてそうなイメージあります」 「無いよ。置いてる植物は錦君が小学生の頃くれた食虫花だけだね。うぅん……部屋に飾るとすれば何の花が良いかなぁ。水槽は直ぐに決まるんだけど花は迷うね」 「スタンダードに薔薇の花とかはいかがですか」 海輝は部屋に飾る花を何にするか迷っていた。 「薔薇か。薔薇も良いんだけど……何というか、錦君は花言葉と季節を無視すれば、桜とか紫陽花とか胡蝶蘭とか百合の方がビジュアル的に似合うんだ。いや、芍薬とか牡丹とかスイートピーやチューリップとかも良いな。錦君なら椿や菖蒲にアネモネとか、梔子とか月下美人とか……あぁ、決まらない。何でも似合うから逆に迷う」 「それなら人に聞かず自分で決めましょうよ」 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。 美しさを象徴する薔薇、威厳を表す百合、誠実謙虚さの菫。 錦に似合う花を。 綺麗で、強くて、可愛くて、凛としてて、繊細で、清楚な錦の様な花――。 そんなイメージの花となれば。 「何て事だ、沢山あり過ぎる」 左手でタブレットを弄り、アクアリウム水槽のデザインオーダーをしながら、右手で携帯電話の画面に指を滑らせながら小さくため息を吐く。 「と言うか、錦君の存在がもうお花でしょ? 花の存在意義は何なのかな」 花束を止めフラワーアレンジメントを検討する。 そして、水槽は珊瑚礁をメインにハナミノカサゴのレンタル料を振り込んだ。 王道の海水魚たちも良いが、折角のレンタル水槽だ。 飼育するには危険で難易度の高い魚も良いだろう。 四方にピンと伸びる鋭い鰭に華やかな造形。珍しいその姿に、目を輝かせ歓喜するはずだ。 ハナミノカサゴが泳ぐ水槽の前で一緒にはしゃぎたい。

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