100 / 218

まさにブラック企業のパワハラ上司の台詞と思考

「朝比奈側の部下の皆様は生きてたかな」 「一応息は有ります」 海輝の代理で資料の受け渡しついでに買い物を頼んでいたのだ。 能面を思わせる男の手には、可愛らしい犬とコーヒー豆のロゴが書かれた紙袋がぶら下がっている。 何ともミスマッチだ。 ホテルの部屋だからコーヒー位は置いてあるが、キャラメルフレーバーのコーヒーが無性に飲みたくて頼んでおいた。 蓮城が手提げをテーブルの上に置くと如月の眼に期待が見え隠れする。 空腹なのだろう。何とも分かりやすく素直な奴だ。 「じゃぁ、大丈夫だね」 如月が「大丈夫なのですかそれは」と突っ込むが、虫の息でも生きてる事には変わりない。 まさにブラック企業のパワハラ上司の台詞と思考だ。 「会社の方は?」 「休息所で虚ろな目をした者と、独り言を言いながらデータ入力をしている者が居た位で後は机に臥せってました」 「もうすぐ死ぬな」 「使い捨てれば宜しいのでは」 「そういうことを口にしたら駄目だよ」 紙袋からまだ温かいホットサンドイッチを取り出しコーヒーと共に如月に勧める。トマトソースの香りが食欲をそそる。 頂きますと嬉しそうにコーヒーを口にした如月は直ぐに何とも形容しがたい顔になる。吐き出しそうに頬を膨らませ、何とか飲み下した。

ともだちにシェアしよう!