錦を迎えるにあたり、不備はないか最終チェックは済ませているが帰り支度を急ぎながらもう一度確認をする。 オーダーしていた大輪の白百合と薔薇のアレンジメントも完璧だった。 届けられた花を見て海輝は溢れんばかりの笑顔を浮かべた。 照明の下で絹の光沢を見せる百合の花が見事だった。 麗しい錦のイメージにぴったりだ。 錦も綺麗な花に心和ませるだろう。 次にレンタル水槽。これが特に良かった。 仕切り壁のコーナーに埋め込むようにして設置した水槽の中で優雅に泳ぐハナミノカサゴの姿には、思わず歓声を上げた。 羽にも見える赤褐色の鰭を四方に広げる姿は、写真よりもずっと見栄えが良く迫力もあった。 このまま飼育したいと本気で考えたほどだ。 錦もきっと驚く。 ハナミノカサゴに対する反応を側で見れない事が非常に残念だが、これは仕方がない。 ――リビングルームにはカメラを仕掛けておいたので、年明けに錦が帰ったあとでじっくりと楽しむつもりだけど。 蓮城の協力もあり、ダイニングセットも無事用意できたし、これで錦の顔を見つめながら食事ができる。 こうして昨日今日の二日で錦を迎える準備は整えられた。 特に不備はない。 あるとすれば部屋の広さだ。 誰も招く予定も無かった部屋だ。 客室は無くても良いし生活が出来れば問題ない。 学生時代から仕事はしていたから、金はそれなりにある。 社会人になる時に立地条件を優先し、あとはバストイレ、洗面所が独立していれば良い程度の希望で物件を探した。 1Kか1DKは空き部屋が無く、物件スペックを上れば家具付きのハーフリビング型の２LDKが見つかる。間取りが広くて部屋をもてあますかと思ったが、寝室の他に書斎として使えば丁度良い具合になった。