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西洋絵画で良く描かれる楽園を見た。
部屋に近づくにつれ、息苦しくなる。
不整脈を疑うレベルで苦しくなるが脳内錦が『頑張れもう少しだ』と応援してくれる。
目的の階で開いたエレベーターから出て、深呼吸をする。
意識してゆっくりと廊下を歩き、玄関に辿り着くと海輝は額から汗がどっと出る。ハンカチでふき取りながら、指紋認証後にパスワードを入れてリミット内にカードキーでドアを解錠する。扉の向こうは海輝の部屋だ。
今は錦がいる。喉がカラカラに乾いていた。
自宅なのに、忍び足になるのが何だか可笑しい。
海輝はそそくさと洗面台に飛び込み、何時もよりも丁寧に手を洗い、含嗽剤を使い嗽も済ませた。
外出後に錦に触る為のマナーだ。
セキュリティ解除音で錦が海輝の帰宅に気が付くと思ったが、センサーライトが灯る廊下はしんとしている。
洗面所から出ても、出迎えは無い。
おやっと思うが、炊事の途中で気が付かないのだろう。
廊下を歩きドアの前に立てば、良く耳を澄まさねば聞こえぬ程度に食器の音や、水の音が聞こえ酷く腹の奥を温かくさせる。
気配を消して、忍び寄る様にしてリビングへつながるドアをそっと開けると、海輝はそこに西洋絵画で良く描かれる楽園を見た。
見えないはずの蒼天に舞う白い羽と、薔薇の花弁が視界に広がる。
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