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ミジンコが流暢にフランス語を喋り出すくらいの超ミラクルだ。
食事が終わり半ば戦場と化したキッチンを片付けるのも、錦と一緒ならとても楽しい。何をどうしたらこんな散らかり方をするのか不思議だが、電子レンジを爆発させていないだけ褒めたい位だ。(ただ単に使用しなかっただけとも言える)
片づけを終えて炭酸水でも飲もうかと冷蔵庫を開け、思わず悲鳴を上げた。
「こ、これは!」
整頓された冷蔵庫に、ラップをかけられたデザートプレート。
そこに鎮座する小振りなロールケーキを見て、何度か眼を擦る。
夢ではない。
プレートを両手で持ち「錦君!」と叫ぶ。
「今度は何だ。煩い男だな」
ノンカフェインの紅茶だのコーヒーだのを物色していた錦が面倒臭そうに振り向く。
「デザート!? これはデザートでは! これはっこのロールケーキはデザートでは。もしかして、手作り? 手作り? 手作りなの? ねぇねぇねぇねぇねぇえええ」
「煩い黙れ」
「これ、僕の為に? え、嘘っ夢?」
「お前は良く食べるしデザートもいるかと思って作っただけだ」
「ぼ、僕の」
「おい、落ち着け」
卵焼きも碌に作れなかった錦は、卵焼き器でケーキを焼いたらしい。
何という進化だ。
ミジンコが流暢にフランス語を喋り出すくらいの超ミラクルだ。
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