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我慢して我慢して、それから食べるご馳走ほど旨い物は無い。
「お前は俺を褒めてるのか貶してるのか何方だ」
「褒めてるんだよ!」
海輝は恭しくプレートをテーブルに置き、両手に一台ずつ携帯電話を構え、ありとあらゆる角度で写真を撮る。夢中でデザートプレートを連写する姿を錦は冷ややかな目で見ていた。
「見苦しい」
そうは言うが、これは撮らねばなるまい。
あ、先ほどの夕飯の写真興奮しすぎて撮り忘れた。
朝比奈 海輝。一生の不覚。
「お前はスマートフォンを幾つ持ってるんだ」
「プライベート用と仕事用で合せて三つ。錦君、新婚旅行は何処が良い? 今すぐ決めよう」
「適当に休んだら風呂にでも入れ」
軽く受け流され海輝はさらに興奮する。
この「慣れた感」が良い。
海輝の扱いなど慣れてますとでも言いたいのか錦君。
何時の間にそんな高等テクを覚えた。――と、体を弄りながら詰問したい気分だが、ここは我慢だ。
我慢して我慢して、それから食べるご馳走ほど旨い物は無い。
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