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「君と僕でハッピーセットな人生を歩んでいこう。僕幸せ」

「洋食にしようかと迷ったが、生物は早めに使った方が良いかと思って」 「愛してる今すぐ結婚しよ」 「寝ぼけてるのか」 「教会式と神前式と仏前式と人前式のどれにしようか」 「おい、しっかりしろ。そんなに空腹なのか?」 「君と僕でハッピーセットな人生を歩んでいこう。僕幸せ」 「おかずが冷めてしまうから、そろそろ食べようか」 話が噛み合わないので錦は早々に匙を投げた。 海輝がおかしいのは今に始まったことではないと考えたのである。時間の無駄だ。それより、食事が冷めてしまうほうが問題だ。 海輝はニコニコと笑い飯椀と杓文字を手にする。 味噌汁と白米をよそい、朝食を囲んだ。頂きますと手を合わせれば、タイミングが綺麗に重なり思わず笑う。 錦も微笑んでいる。 幸せそうな表情だった。ドキドキする。 幸せだった。今すぐ結婚したい。 「うん?」 目の前にある梅型の小鉢は、確か貰い物の食器だ。 使わないからと箱のまましまい込んで、存在すら忘れていた。 家主でさえすっかり存在を忘れていたそれを、錦が見つけ出したのだ。 それだけの事なのに、じわじわと胸に来るものがある。 記憶の隅に追いやったものを錦が気付いた。そんな些細な事なのに。 実にエモーショナルな光景だ。 食器棚を覗いて料理に使用する皿を選んでいる姿が容易に想像出来て、床をゴロゴロと転がりながら悶えた気持ちになる。 「今更だが、この小鉢使って良かったのだろうか」 「うん。実は存在自体忘れていたんだ。ようやく使われて皿も喜んでいるとも。こうしてみると、良い皿を選んだね」 小鉢を引き寄せて料理の見栄えも褒めると錦ははにかむ。 絶対錦が卒業したら結婚しよう。 彼の華奢な指には装飾の無いプラチナのシンプルな指輪が似合うだろう。

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