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これは幸運なのか拷問なのか。
十二月三十日。快晴。
天気予報によれば本日の最高気温は十二.五度で最低気温は一.四度らしい。
寒かろうと暑かろうと海輝は比較的朝はスッキリと起きることが出来る。
未練なく温かなベッドから抜け出し、厚手のカーディガンを羽織り寝室をあとにする筈が――……できなかった。
出来る筈も無かった。
「ん」
小さな声の主を見下ろす。
飽きもせず一晩中眺めていた顔。彼が起きなかったら仕事も何もかもを放っておいて、ずっとベッドで過ごしていただろう。
ぴくりと瞼が動き、閉ざされた瞳がぱちりと開く。
「……おはよう」
寝起きの潤んだ瞳が綺麗だった。掠れた声で短く挨拶して、眼を擦る。
一晩中密着した体温が、もぞもぞと動く度に海輝はのたうち回りたくなる。
これは拷問だろう。
「海輝、お早うは?」
まだ覚醒しきっていない何処か甘えたような声に充血した目を動かす。
ぎこちなく首を動かすのは、ブリキ人形の動きに近い。
「グッドモーニン……」
ふっと笑い胸元に頬を摺り寄せる。柔らかな感触に、息を詰める。
寝起きだからか、何時もより温かな手が海輝の体を這う。
決して性的な物ではない。
錦にその気は無いのに海輝の限界を試すような動きだ。
これは幸運なのか拷問なのか。
幸運な事なのだろうが、正直性的な意味で辛い。
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