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天然の男殺しとか質が悪すぎる。

「に、にしきく」 指先が心臓辺りを撫でる。円を描く仕草に面食らう。暫くして飽きたのか錦は動きを止め、心臓の上に掌を被せる。 シャツ越しに錦の体温が馴染む。 胸元に収まっていた頭を起こし、海輝の心臓の真上に場所を落ち着ける。 「心臓の音凄い」 心臓の音が凄いのは、お前の所為だ。 おい、いつからこんな男殺しになったんだ。 「そりゃ、君が僕にくっつくからだろ」 「普段くっ付いてても、お前の心臓はのらりくらりと脈打っている」 「僕はそこまで感度は悪くないぞ」 「でも普段はこんな風にはならない」 「スケベな言葉に全部変換されそうで困る」 恥じらいが無いのは錦に下心が無いから。 動物や縫いぐるみを撫でるのと同じ感覚なのだ。 天然なのか。天然だろう。天然の男殺しとか質が悪すぎる。 目を伏せ心音を聞く錦を見ながら無性に自慰行為がしたくなった。 何というか、我ながら最低だと思う。 でもこれは、本人にその気が無くても誘われているのではないか。 錦の腰に恐る恐る手を伸ばした時、絡まる足がするりと解けた。

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