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海輝の特権だ
湯気の立つ艶々とした白米に豆腐と葱の味噌汁が並ぶ。
小振りだが肉厚な鰤の西京焼き、白菜のお浸し、菊型の小鉢には蓮根の金平、角小鉢には高野豆腐のふくめ煮が添えられる。
錦の料理はどれも造りが丁寧だ。
手を合わせ頂きますと挨拶をすれば、やはりタイミングが綺麗に重なる。
そしてそれを二人で笑う。
些細な事だが海輝にとっては特別に感じた。
「はわわ、美味しい。錦君の作るお味噌汁でないと、僕ぁ満足できない体になってしまった」
「大袈裟だな」
既に錦の手料理の虜になっていると自覚がある。
今日もこの美味しい味噌汁が飲めると思うだけで、満面の笑顔になる。
「おぉっ、高野豆腐! 久しぶりに食べるよ。凄い、朝から良く作ったね」
錦は嬉しそうに頷く。
海輝は嬉しくなる。
錦は滅多にこんな顔をしない。
こういう表情が見れるのは海輝の特権だ。
「美味しそう」
口に含んだだけで、出汁が滴る。
ざらつきがなく、フワフワと柔らかく滑らかな触感だ。
水ではなく熱湯で戻したか、そのまま戻さずに煮たのだろう。
「うん、この触感は良い! 高野豆腐って、美味しいけど触感がこうザラザラボソボソな感じじゃないか。これは、凄いプルプルだ」
「水やぬるま湯でも良いが、熱湯で戻した方が好みだったんだ」
「でも、煮崩れしてないじゃないか。凄いぞ錦君。旨い! これ永遠に食べ続けたい。んまっ、おいひい!」
出汁が滲みて仄かに甘くて上品な造りだ。
お世辞抜きで美味しかった。
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