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「今日は弁当を作ってみた」「何だってぇええええええ!」

十二月三十一日。快晴。 天気予報によれば本日の最高気温は十一度で最低気温は二度らしい。 仕事納めの朝、海輝は心臓が止まりそうになった。 いや、実際数秒間だが確実に止まっていた。 理由はやはり錦であった。 麗しの妻と美味しい朝食に身も心も満たされ、さぁ、一日頑張ってきますと出かける準備をしていたら錦に呼び止められる。 「何だい? もしかして、行ってらっしゃいのキス!? そうなの? じゃぁ、両頬と唇にお願い」 錦君解禁は今夜だ。 まだ、その時間ではないがサービスだろうか。 錦君も実は我慢できないのに我慢していたんだな!  そう笑顔で振り向いたら、錦が緊張した面持ちで此方を見上げて来る。 「うぉっ!」 なにこれ、可愛い。 「今日は弁当を作ってみた」 「何だってぇええええええ!」 これまた何処から引っ張り出したのか、存在を忘れていた代物だ。 綺麗にハンカチに包まれた二段重ねのランチボックスを手にした錦と言うのは、殺人的に可愛い。

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