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「欲しくなかったら、錦君解禁時間をカウントダウンなんてしないよ」
「そもそも目的がおかしい。俺が欲しいからじゃないのか。俺を起こすためだと? 撤回してくれ」
「欲しくなかったら、錦君解禁時間をカウントダウンなんてしないよ」
いやぁ、待った待った。
軽口を叩くと錦が目を泳がせる。
「本当は、常に、その、か、解禁したかった。去年の七夕の時お前が、何もしないから」
錦は何時も相手の目をまっすぐと見つめて話をする。
それが今視線が合えば逃げるように反らす。
反らすくせに、ちらちらと恥ずかしそうにこちらを伺う。
強気で威風堂々とした日頃の振る舞いとは別人のようだ。
そんな錦らしからぬ仕草が初々しさを醸し出す。
単純に言えば、海輝の海輝君を直撃した。
素晴らしい。
「その、俺からは、はしたないと、思うが……どうしたら良いものか。お前に全てを任せるのも怠惰だとは思ってはいる」
裾から手を離して、恐る恐る海輝の胸元に触れる。
「でもお前の顔をみると、恥ずかしくて俺からは何も出来ない」
いやいや。
散々言葉で煽り続けたあげく、無自覚なのかわざとなのか挑発的な言動も山ほど有りましたが!?
それも、出会って間もない小学四年の頃から。
直近では七夕あたりとか。
予想の斜め上の言動を取り、海輝を驚かせる事も多い。
「……受け身ですまないとは思ってる」
結構責めてくるなと思うことも多々有るが、錦はそうとは思っていないようだ。
こちらを誘惑しようと意識すれば、急に恥ずかしくなって行動に移せなくなったとか、まぁ、あり得る。可愛い。
子供の頃の方が恋愛を意識しないだけあり、今よりも大胆で挑発的だった。
海輝としてはどちらも可愛くて大好きだ。
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