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君を抱くためのたしなみ *性描写あり
「も……うっ――駄目」
今にも泣きそうな声音で音を上げる。
「お願いお願いだから」
錦は誰にも弱音を吐かない。
そんな彼が唯一泣き声を上げる相手が海輝自身であると思えば、これ以上に幸せなことは無い。
時折汗ばんだ大腿が頬を擦る。錦が腰を捩り逃げようと身体を動かすたびに、ローションが流れてくる。後孔だけでは無く会陰まで滴り落ちる。頭を掻き回されながら、貪りつくす勢いで脚の間に顔を埋めたまま吸い上げた。
「あっ――……はぁんぅぅっ」
口の中で僅かな熱量を受け止め飲み下す。肩で息をしながら体を起こして、錦の大腿を抱える。抵抗がなく重みが増した。力なく横たえる身体は感覚だけは鋭くなっている。額に唇を落として、サイドボードへ手を伸ばす。
「……てる」
「ん?」
肘を錦の顔の横について、頭を囲う。海輝の視界に赤い頬と溶けた視線が頼りなく収まる。首に腕を回し錦から口付けを強請ってきたのが嬉しくて、両掌で錦の頬を撫でる。くちゅくちと卑猥な音を立てて、吐き出した精がまだ残る舌を絡ませながら頭を撫でる。撫でながらもう片方の手でサイドボードの中を探り目的の避妊具を持ち出した。カサカサと音を立てて、パッケージを開けると汗で何度も滑る。
避妊具を付けている所を見せないように、唇を離さず皮膜を被せていると錦の手が海輝の額を押す。
「んぷっ……何、キスの邪魔するな」
「はぁはぁ――……はっ、何……してる」
ちらりと下腹部に視線をやる。
避妊具のパッケージを開封する音で何かを察したのだろう。
「え? いや、君を抱くためのたしなみ」
「やめろ」
「はい?」
今更挿入無しは流石に無いと信じたい。
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