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第7話

そのまま教室を後にして足早に階段を駆け降りる。別に急ぎではないのだが通知の量が先程よりも増している 明らかに異常なものだから、気味が悪くなる。 気分も下がる一方だった。 「…遅い」 「悪かったな。で、何?朝っぱらからうるさいんだけど」 「何って、昨日はあいつの家にいたの? 本当、こっちの身にもなって欲しいよ。父さん昨日からずっと機嫌悪いんだから」 「…父さんねぇ」 晶は歩いている間もずっと愚痴をこぼしていた。 対して奏斗はそれに反応するでもなくスマホを眺めて、ただただ聞き流す 晶はそれを見てムッと顔に皺を寄せるものの、喋るのをやめない。 厄介だな、本当に。 こいつは父ともそっくりだ。 いらぬことに口を出して、ああだこうだと聞いてもいないことを勝手に話し出す。 お前のそういうところが嫌いなんだ。 愚痴を聞かされ奏斗の中にもストレスが溜まっていく 2人が揃っていいことなど有りもしないのに、晶がしつこく突っかかってくるため、奏斗もお手上げ状態のまま、だらだらと歩いているうちに家についた 奏斗にとって人生の中で一番長く感じる帰り道だった 今は午後の5時 家に入る前に時間を確認する 自分で開けるのが面倒なため晶がドアを引くのを待ち、開き終わるのも待たずにドアの隙間からそそくさと中に入る 晶はムッとしたものの、何かを言う気配が無いため、それをいいことにさっさと靴を脱いで家に上がる 早く自分の部屋に逃げ込みたい気持ちが込み上がり、2階に通じる階段を上がろうとしたが… 「おい、奏斗!帰って来たのか。全く、なんの挨拶もなしに部屋に行くつもりか」 …しまった。父に捕まった。 いつもならこの時間はまだ仕事から帰って来ていないから油断していた 思わず舌打ちをしてしまうのを我慢する 「おい、待て。話はまだ終わってないぞ」 さっさと部屋に入ろうと階段を駆けあがろうとしたが、父に手首を掴まれ阻止される 振り払おうとするも、奏斗は体が小さく力も弱いため全く歯が立たない 逃げ出そうとすればする程、手首を掴む力は強くなり掴まれた箇所からギリギリと音がする 「…離せよ」 「昨日はどこに行っていたんだ。なんの連絡もなしに またあいつの所に行っていたのか?あいつとは関わるなと何度も言っているだろ」 「いっ…父さんには関係ないだろ!」 「このガキっ…!」 「もうやめてよ父さん」 さすがに止めに入った晶に気を取られた瞬間を狙って、手を振り払う。 そのまま階段を駆け上がり、部屋に入ってドアを閉める。すかさず鍵を閉め、安心感からか崩れるようにしゃがみ込んだ。 「…いっつ」 安心したためか、腕の痛みを実感し始めて掴まれた箇所を見る。 赤く充血した手首は手形の跡をくっきりと残していた それを見たら急に恐怖が増してきた。これまで晶という存在もあったため好き勝手やってたし父も大人しかったが、今日はやけに苛ついていた …………………怖い……………… 明日も朝から学校なのに 父と鉢合わせしてしまったらどうしよう 何をされるかわからない そもそも晶にあんなとこ見られてよかったのだろうか? 父との関係が晶にバレたら? 急激に押し寄せてくる不安に手が震えだす 同時に破裂寸前だった涙腺がついに崩壊しだし、溢れて止まない涙を震えた手で拭う 「大丈夫、大丈夫」 慰めるように真っ赤な手首を優しく指でなぞって、自分にそう言い聞かせる いつも優也がしてくれた、おまじない 何度も何度も手首をくるくると撫でれば、不思議と痛みが引いたような気がした いつの間にか涙も止まっていた だんだんと意識が遠くなる お腹減ったなぁ 風呂、入ってないや そんなこと考えながら重たい瞼を閉じた

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