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第8話

ノック音で目を覚ます どうやらあの後そのまま寝てしまっていたようだ ノック音の次に昨日とは裏腹に優しい父の言葉が聞こえた 「奏斗、起きているかい?昨日はごめんね。ついカッとなってしまって」 「…」 「晶はもう学校に行ったよ。奏斗は今日は休みなさい。連絡は、しておいたから」 そう言うと父は部屋から離れていった 下の階から微かに聞こえる足音はしばらくすれば玄関が閉まる音と一緒になくなった どうやら仕事に行ったようだ ドアを開けるとすぐ足元に作りたてであろう朝食が置いてあった そろりと部屋から出れば案の定誰もいなかった 朝食を食べる気にもなれず、また部屋に戻って布団を頭から被った よかった。怒ってなかった 実の父にこれ程まで怯えている自分が酷く惨めに思えて嫌になる だが、今は耐えるしか無かった 高校を卒業したらここを出て行くつもりだ それまではここにいなければならないが、わざわざ家から遠い専門学校を希望したのだ 優也とは離れ離れになってしまうが、 もう少しで晴れて自由の身なのだ 今は大人しくその時まで我慢するしかない

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