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第11話

置き去りにされてから1週間 公園の近くの路地裏にうずくまっていた奏斗を父が見つけた その時父は泣いていた 何故かはまだ、わからなかった やっと家に帰ってこれたものの、家にはもう母の姿は無かった 母の荷物や写真はそのままなのに、たった1人いなくなっただけで、その空間はもぬけの殻のように思えた だが、その1週間から父は豹変した いつも奏斗を殴る大きな手は、頬を撫でるようになった いつも暴言が出る口は、体にキスをするようになった あまりの変わり様に困惑したが、 どんな形だろうと自分を愛してくれるようになり、正直嬉しかったのだと思う だが、日に日に父の欲求は増えていき、いつしか父と奏斗の間には沢山のルールが増えていった まるで父は手のひらの奏斗を握り潰すかのごとく、縛り付けていった 奏斗は疑問を持つようになった これが本当に自分が求めていたものなのか 「奏斗。お前は可愛いな」 ………違う……… 「奏斗。お前は俺の物だ」 ………違う……… 「奏斗。お前は母さんより、俺の方が好きだよな?」 ………違う……… 父の口からでる言葉は全て奏斗の求めているものではなかった 父が奏斗に向ける愛は嫉妬や憎悪によく似ていた ああ、この人に愛を求めてはいけないのか 我ながらに哀れだった こんなになるまで気づけない自分が馬鹿馬鹿しく思える いや、きっともっと前から気づいていた 認めたくないだけだったのかもしれない そんな奏斗をいつも支えてくれた存在が優也だった 優也の手は、父の弄り回すような手つきと違い、まだ火傷が残る背中を優しく撫でる 指でくるくると円をかいて 「大丈夫、大丈夫」 涙が止まるまで、耳元で囁く いつも奏斗はこのおまじないに助けられた 優也は奏斗が虐待を受けていた事を知っていたが、無理に問い詰めることはなく、ただ静かに待ってくれていた 奏斗は、そんな優也のことが好きだった

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