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第18話

自動ドアが開くと同時にいらっしゃいませ。というデジタル音が響く がらんとした人の少ない本屋 ここは品揃えが良く、綺麗な雰囲気なのに、向かいに別の本屋があるためか、目立たないところにあるためか、店内にはあまり人影がない おかげで静かなところで本が読めるので、奏斗は案外この場所を気に入っている 特に読みたい本などもないからふらふらと歩き回る ときおり、気になる小説本を手に取っては棚に戻すを繰り返していた 偶然立ち入った動物の写真集が集められたコーナーで、可愛らしい猫の写真などを見て時間を潰していると 「…奏斗君。猫好きだったっけ?」 いきなり後ろから声をかけられて驚いて叫び声をあげそうになった 「っ!?あ、ああ宮本さんか」 後ろから声をかけてきたのは、ときどきこの店で会う宮本さんという男の人だ 最初の出会いは、公園で暇つぶしをしている奏斗に宮本さんから話しかけてきたことが、きっかけだった 最初は警戒していた奏斗も話していくうちにお互いの共通点を知ってからは信用しきっている 会っていくうちにこの本屋に通っていることを知ってからは、頻繁に話すようになった 「猫、好きなんだっけ。買ってあげよっか?」 「んん、いい。猫より、くまの方が好きだし」 「熊?なんで?」 「…昔持ってたおもちゃが、くまのぬいぐるみだったから」 「そっか」 ぽつぽつと溢れる会話を宮本さんは一つ残らず拾い上げて返してくれる 奏斗も何故か、宮本さんの前では緊張をする事なく、力を抜いている その理由は、2人の共通点にあった 「宮本さんは、また彼氏さんのために買いに来たの?」 「うん。前の本も気に入ってもらえなかったから」 2人の共通点。 それはどちらも同性愛者であること 世間一般では話せないような事を共有することでお互いを信用できるになった 宮本さんは、ずっと思い続けていた人と晴れて同居できるようになったと、話していた。 話を聞いてるうちでは宮本さんのお相手はかなり、わがままなようで、好きなものしか食べないとか、身の周りの事を全部宮本さんがやらなければいけないとか。 正直そんなやつなんてまっぴらごめんだと奏斗は思うのだが、あまりにも宮本さんは嬉しそうに話すものだから、そんなことは言えなかった そしてもう一つ 宮本さんは知っている 「…手首、痛そうだね。またやられたの?」 「別に、痛くない」 そっと手首を撫でられる。 いやらしい手つきではなく、本気で心配してくれているようだった そう、宮本さんは奏斗が虐待を受けていることを知っている これは奏斗から話したことだった なぜだか奏斗は宮本さんに対してはなんでも話せる気がした 大人は嫌いだが、宮本さんの優しさはどこか、優也によく似ていたためかもしれない 「もう、こんな時間だ。奏斗君、またね」 「ん…あ、これ買ってってあげなよ。面白かった」 「ありがと。見せてみるよ」 奏斗が渡した本を持って宮本さんは去っていった しばらくしてから、奏斗も本屋を出て、近くのカフェで暇を潰してから帰った

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