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第23話

「ん"〜っ」 晶の行動に動揺し、パニックを起こしそうになる とうの本人はまるで当たり前だとでも言うような涼しげな表情でされるものだから、余計に不安になる どんっ、と晶の胸を叩くなり、足を使って引き離そうなり、必死に抵抗するのも虚しく晶はびくともしない 先程顔を掴んでいた手は頭の後ろに移動していて、ガッチリと固定されているせいで顔を引くことも、逸らすことすらできない 最悪だ 本当に 思えばどうして今まで晶に無警戒だったのか まず晶は何故こんな事をするのか そもそもここは学校だぞ 誰かに見られたりしたら… 何が何だかわからない頭を整理しようとするがこんな状況で冷静になれるわけがなく、その間にも晶は奏斗に迫り続ける いつの間にかシーツに押し倒され、体の上から晶が跨り、腕は片手で拘束され、ついに身動きが出来なくなってしまった 「んあ…やっ、んん!」 不意に空気が吸いたくて口を少し開ければ、晶の舌が容赦なく侵入してくる もうどうすればいいのかもわからない 自分の口の中に別の生き物が潜りこんだかのような錯覚を感じた それは父とはまた違う不快感が奏斗を襲う このとき舌でも思いっきり噛んでやればよかったが、奏斗の頭の中はそれどころではなかったのだ ただジッと、早く終わる事を願うばかりだった 何分そうしていただろう 奏斗にとってはとても長く、そして一瞬の出来事だった やっと晶の舌が奏斗の口から離れた お互いの唇から細い糸を引かせて、まるで夢の中を漂っているような気分の奏斗とは裏腹に晶はまだ物足りなさげな表情をしていた 「…続きはお預けか、キスだけでこんなトロ顔になっちゃってさ」 スマホで時間を見るそぶりをしてそう言って、奏斗の上から退いた ふわふわと酸素が足りないようで、頭がぼーっとしている奏斗を見て、晶は面白そうに奏斗の耳を撫でた 奏斗はくすぐったさに体をよじり、その手を振り払う そのまま恥ずかしさで奏斗は顔を隠すようにシーツを被り丸まってしまった 晶はその動作を馬鹿にするように鼻で笑って 「また、今度」 と言って部屋から出て行った なんなんだ 何がしたいんだよ 嵐が過ぎた後の静寂の中、先程までのことが頭から離れない 今更になって恥ずかしさが増して、奏斗は思考を遮断するかのように強く、目を閉じた

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