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第24話

「かなちゃん、迎え来たよ」 ドアを開ける音がして、優也の声が聞こえてくる なんだか反応することすら怠くて、布団を被ったまま声を出した 「…ゆう」 「何?まだ眠い?」 「いや、だるい、頭いたい」 「大丈夫?水飲めば?」 そう言ってペットボトルの水を飲ませようと奏斗の布団を剥ぎ取る 急な明るさに目が眩む奏斗を無理やり起こさせて優也は水を飲ませてきた 「きっと寝過ぎの不調だよ。だから言ったでしょ〜。夜ふかしはダメだって」 「ははっ。母親みたい」 「もうなんだよ、せっかく心配してあげてるのに」 「わかったって…」 早く帰ろうと急かす優也に起こされ渋々立ち上がる ふらふらと足元はおぼつかないが、優也が側で支えてくれた 「ね、奏斗」 「あ?何」 「なんか、あった?」 帰る支度をする奏斗は手を止めて、その言葉にぴくりと反応する 見ていたのか はたまた顔がまだ赤かったのだろうか 「な、んで?」 「んんん。なんとなく?なんか、無理してない?」 ぶわりと顔に熱が集まるのがわかる 少しでも気を抜いたら泣いてしまいそうで 「してないっ。大丈夫」 「…かなちゃん」 どうしても奏斗は知られたくなかった 年下にまで舐められるような惨めな人間だと、優也には知られたくなかった 「俺には言えないこと?」 「だからっ違うって…」 「言いたくないの?」 「…いいたく、ないっ」 「そっか」 頑張って耐えてはいるが、優也からしたら泣きたいことなんてバレバレなのだろう 強く追求してこない優也が今日はいつもよりしつこかったのは、きっとそれほど奏斗を心配してくれているからだろう その優しさにさらに申し訳なさが湧いて、また涙が出そうになる それを黙って見ていられなかったのか、優也は奏斗をそっと抱きしめてから 「もう帰ろ?」 そう言ってくれた 奏斗は小さく頷いて、優也から差し出された手を握る そのままぐいぐい引っ張られて歩いたが、今は前を歩いてくれる優也に感謝した やっぱり優也には隠し事はできない それは優也の観察能力といえ、奏斗の優也に対する罪悪感のせいだろうか きっと優也にはすぐにバレてしまうだろうが、なるべく自分の力でなんとかしたいと思ってはいる 優也には十分助けてもらったのだ もう迷惑はかけたくなかった ただ、それだけだった

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