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第25話

「おかえり、兄さん」 家に入ればまるで待ち構えていたかのように壁に保たれる晶がじっとこちらを見ていた 「随分遅いね、またあいつと会ってたの?」 「………」 答えるだけ無駄だと、気にせず無視して自分の部屋へ向かう だが晶も引くことはなく、無視し続ける奏斗の後ろをついてくる ついには部屋まで入って来ようとしたため、流石に奏斗も無視する事ができなかった 「キモい、離れろ」 「やっとこっち見てくれたね。兄さん、あいつと関わるのやめなよ。あの胡散臭い笑い方、ほんと気に入らない」 「お前には関係ないだろ」 「あるよ、大ありだ」 そう言うと遠慮もなく部屋に入って来て、そのまま奏斗を壁に押さえつけてきた 何かが違う雰囲気に変わった晶に動揺しながらも奏斗は必死になって抵抗してみせるが、全く意味はないようだった 「兄さんは……僕の兄さんだ」 頬を強く掴まれ、無理矢理顔を向けさせられる 目を逸らすしかできない奏斗をまるで鼻で笑うようににやけてからグッと唇を押し付けてきた 「ん、んむ」 くちくちと音がなる 正直晶の急なキスにも、もう驚きはしない もう、半分程は抵抗するのも諦めていた グイッと親指で口を開かせられればすぐさま晶の舌が潜り込んでくる 「んふぁ、んぁ」 「ははっ可愛いね」 そっと目に溜まった涙を拭かれる だんだんと晶のキスにも慣れてきてしまっている体に嫌気が差してくる 「いい?兄さんは、僕のだ。あいつのもんじゃないから」 意味のわからないことを、まるで子供に聞かせて言うように優しく、そして圧倒的な支配欲で奏斗を押さえつけていく もう、恐怖心で奏斗の心はズタズタだった それでも精一杯晶に争う奏斗も、晶から見れば滑稽だったろうに 「やめろ、何が…誰がお前の物だよ」 「僕のじゃないなら誰の?」 「俺は!俺は…誰の物でもない」 奏斗には晶がまるで父のように見えていた カタカタと指先が震えている 明らかに寒さのせいではない鳥肌が体中に出て来ていた もう、やめて欲しかった 「じゃ、どうしたら僕のになってくれるの?」 「も、いいだろ。もうやめてくれよ…」 「答えて、早く」 「…お願いだから…やめてよ」 父に似ているが、父とは違う慣れない威圧感に耐えられず奏斗は思わずしゃがみ込んでしまう 見かねた晶も同じようにしゃがみ込み、わざと目線を合わせて来るところなどが、余計に奏斗の不安を煽った そしてまた、優しく、圧倒的な声で話し始めるのだ 「どうしても兄さん…奏斗がほしいんだ」 「うっ…ぐすっ」 「でも、それが出来ないなら無理矢理にでも。僕は本気だからね」 ついに泣き出してしまった奏斗の頭を繰り返し撫でる晶の手が、いつ殴りかかってくるかわからない ビクビクと震える奏斗をまるで慈しむかのようにそっと抱きしめてから、晶は部屋を出て行った 緊張で強張っていた体から一気に力が抜けた それでもまだ指先は震えたままだった 明らかにいつもの様子ではなかった晶は、数ヶ月前の可哀想な義理弟の姿ではなかった 自分は一体どうすればこの地獄から抜け出せるのか 頑張っては見たが結局問題を増やすだけだ どうすればいいのかわからない どうすれば‥‥… 「…たすけて…ゆうや」

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