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第38話
熱い…
体の内側も外側も、至るところが熱を持ち、じんわりと汗が滲むのがわかる
それなのに指先は冷たく痙攣をしていて、ぼんやりした頭でも何かがおかしいと思った
喉、渇いた…
そう思い起きあがろうとするも体は動かず、瞼が開き切らないのか視界は真っ暗なままだ
熱い
起きなきゃ、そう思うのに、体はまったくいうことを聞かなかった
「おきた?かなちゃん」
ふいに真横から聞き慣れた優也の声がする
真っ暗な視界の中、隣りに優也がいると気づき幾分か安心して、奏斗は声がする方に手を伸ばした
「ゆ…や…」
おかしいんだ。体が
熱くて、寒くて、真っ暗なんだ
たすけてよ
そう伝えようとするも声がでない
震える手を必死に伸ばして優也を探していると、ふいにその手を握られる
優也だ、見つけた
「み、ずを…けほっ」
乾いた喉からはやはりカスカスとした音しかでず、うまく喋れない
とりあえず、何かを飲まなきゃ
「そうだね、喉渇いたね。可哀想に。今飲ませてあげるよ」
優也はそう言うと、少しの間があった後、奏斗の唇に柔らかいものが当たった
未だ霞がかった思考ではそれがなんなのかわからなかったが、奏斗の口の中に生ぬるい液体が流れ込み、喉の渇きが限界だった奏斗は、それを躊躇なく飲み込んだ
それは少量ですぐに飲み干してしまい、まだ欲しい奏斗は優也に懇願する
「もっと…」
「ふふっかなちゃん、可愛い」
するとすぐに再び奏斗の唇に柔らかいものが当たる
そこから液体が出ることを知った奏斗は、必死に口を開け全て飲み干す
それを2、3回繰り返し、やっとちゃんと喋れるほどになり、声をだして優也に助けを求めようとしたが、再び強い眠気に襲われる
だめだ、さっきと同じ…
体の力が抜けていく奏斗に優也は優しく言う
「大丈夫。少しずつ慣れていこうね」
優しく頭を撫でられる感覚と共に、再び意識が途切れた
次に目を覚ましたときには、幾分か体の調子はよくなっていたが、やはり体は動かないし、目の前は暗いまま
「ゆうや、?」
声は出そうだったので優也を呼ぶが、今度はそばにいないらしく、返答はなかった
「ゆうや、優也…」
いないとわかった瞬間、途端に奏斗は不安になり、何度も優也の名を呼ぶが声は帰ってこない
体を起こそうとしたが、腕は背中側で固まり全く動かず、うまく立てない
なんとか足を使って上半身を起きあがらせるが、目眩のようにくらくらとして、すぐにまた床に伏せる
いったい俺の体はどうなっているんだ
もぞもぞと這いながらもなんとか起きあがろうと試みること約数十分
ふいにガチャリと扉の開く音がして、奏斗は驚きにバランスを崩し、上がりかけていた頭を地面に強く打ってしまった
「ゔっ」
「あーかなちゃん!無理しないで」
すぐに優也が駆けつけてきた気配がして1人じゃなくなった事実に、頭部の痛みよりも安心が募ってしまった
「大丈夫?赤くなってる」
「ゆう、おれ、おれ今どうなって…」
奏斗の額を撫でる優也に奏斗は問うが、変わらず頭を撫でる優也は、奏斗の言葉に答えると言うより、独り言のように呟いた
「薬が切れてきたみたい。もう一回飲んどこうか」
「…え?くすり?なあ俺、なんも見えな…んむっ!?」
言い終わるよりも先に唇に柔らかいものが当たる
先ほどと同じように液体が流し込まれ、奏斗は驚きながらもそれを飲み込んだ
「ん、上手。今度は側にいてあげるからね」
「ゆう?おれ、あ…」
再び強い眠気に襲われ、体の力が抜けていく
少しでも抗おうとしたが、それも虚しく奏斗の意識はぷつりと途絶えた
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