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四、書状、届く

 翌朝、光政は再び書状を受け取った。  そのことで呼び出された柊は、舜海が光政の部屋で酔っ払って眠っているのを見ると、ぎょっとして立ち止まる。 「うわ、何やってんねん、こいつは」 「いいんだ。久々に時間ができたからな、酒の相手をさせていただけだ。まぁ、こんな有様だが……」 と、光政は苦笑しながらそう言った。  (いびき)が五月蝿いので襖を閉め、柊は光政の前に改まって座る。 「千珠の様子は?」 「……ちょっと、昨日はつらそうやったかな。宇月が何をしてもあまり落ち着かへんくて……何やら不穏な空気を感じます」 「その不穏な空気、当たりだな。昨日の能登の話、やはりあれは夜顔の父親のものだということだ」 「……そうですか。なんでそんなにすぐ分かったんです?」 「陰陽師衆も能登へ渡っているらしい、検分にな。……千珠の不調は、能登で暴れているその妖のせいということか?」 「そうなるでしょうね。こんなに距離があっても影響を受けるとは。よっぽどの大妖怪なんやろうな」  柊は難しい顔をした。 「陰陽師衆は、千珠を寄越すなと言っいるらしい。むしろ危険だと言ってな」 「へぇ……。そうですか。でも……」 「ああ。この話、聞けば千珠は行きたがるだろうな。何しろ、夜顔に関することだから」 「そうですねぇ。でも、能登守はなんと?」 「能登守は借りれる力はすべて借りたいと言っている。陰陽師衆の力も、千珠の力も」 「うーん……」 「そんなことは、千珠に決めさせたらええやないか」  いつの間にか鼾が止み、襖ががらりと開いて舜海が出てきた。いつも以上にぼさぼさの頭をして、どことなく不機嫌な顔である。 「あ〜、頭いてぇ」 「飲み過ぎだ、馬鹿者」 と、光政。 「いや、ついつい……。しかしそんな話が来てたとは」 と、舜海は柊の横に座りながらそう言った。 「酒臭いぞ、ど阿呆」 と、柊が迷惑げに文句を言う。 「やかましい、分かってるわ。いつ来た、その話」 「一昨日やな。詳しい情報を求めたら、さっきこの書状が届いたんや」 と、柊は窓から外を見遣り、天高く舞っている鷹を見上げた。 「へぇ」  柊から詳しい話を聞くと、舜海の表情はみるみるしっかりとしてきた。 「なるほどな」 「まぁ舜海の言うとおり、千珠さまには全てお伝えしておこうと思います」 と、柊は光政に告げた。光政は頷く。 「それを聞いた上でどうするか決めたら、俺の所に来いと伝えてくれ」 「分かりました」  柊は頷き、舜海は難しい顔をしながら頭をかく。 未妻はそんな二人を見比べつつ、物憂げに頬杖をついて空を見上げた。  今日も暑くなりそうな、眩しい夏空だった。

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