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四十七、幸せな朝
宇月は目を覚ました。
横を見ると、裸で眠り込んでいる千珠の姿がある。宇月の首の下に腕を敷いて、向かい合って抱きかかえるような格好で眠っている。
初めての行為は、少しばかり宇月の身体に痛みを残していたが、千珠はどこまでも宇月を気遣いながら事を進めてくれた。
ゆっくりゆっくりとことを運んでゆく千珠の身体に昂ぶりを感じながら、自分が女であったことに気づく。
当たり前だが、千珠は男なのだ。
今まで、自分はどこか千珠のことを子どもと思って接していたことに気づく。
自分を本当に、愛おしいと思っている、それが伝わってくる千珠の目つきが記憶の中に蘇るたび、宇月の胸は甘い音を立てて高鳴った。
宇月にとっても、千珠は愛おしい存在だ。今まで感じていたような、子どもの成長を慈むような気持ちではなく一これからは一人の男として、愛してゆこうと決めた。
「ん……」
宇月が起きて身体を動かしたことに反応してか、千珠が呻いた。
「……おはようございます」
「おはよ……」
千珠はぱちぱちと瞬きをして、じっと宇月を見つめると、幸せそうに微笑んだ。そして、ぎゅっと宇月の裸体を抱き締める。
「千珠さま、苦しいでござんす」
「……あ、ごめん」
二人は横になったまま、じっと目を見合わせる。その状況だが、宇月はふっと吹き出した。
「なんだよ」
いつものように、不機嫌な声。
「いえ……千珠さま、昨日はとても男らしくて素敵でござんした」
「……」
千珠が赤くなる。
「でも今は、いつものように可愛らしいなと思って」
「……可愛いとか言うなよ。やっぱり、子ども扱いだな、俺」
千珠はごろりと上を向いて、開いた右手を額に載せた。宇月は笑った。
「正直、そう思っていたでござんすが……私はちゃんと千珠さま自身を見ることができていなかったようでござんすな」
「え?」
「千珠さまはいい男になったでござんすよ。そんなあなたに好いてもらって、私は幸せでござんす」
千珠は満面の笑みを浮かべて宇月を抱きしめた。
「もう、離れない。お前とずっと一緒にいる」
「千珠さま……」
「千珠さま、なんて呼ぶな。千珠でいい。お前の一番近くにいたいんだ」
「……はい」
二人は自然と唇を重ねた。
つと、宇月の目から、涙が伝う。
「……幸せで涙が流れることが、あるのですね」
「宇月、大好きだ……」
宇月の涙に唇を寄せて、千珠はそう囁いた。
千珠の腕に抱かれ、心の底から愛しいと思う。
ずっと、この人を側で見守っていこう。
もう、あなたを迷わせないように、愛していこう。
宇月は密やかに、胸の内にて決意した。
「宇月」
「はい……?」
「お前やっぱり、思ったより胸、大きいんだな」
千珠の頬に、宇月の平手が思い切り炸裂した。
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